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いが再発見 No216 碧梧桐が書いた自筆短冊

俳句は和歌と違い四季折々のさまざまな食べ物が登場する。現在、伊賀市上野丸之内の芭蕉翁記念館で俳聖芭蕉の生きた江戸時代から現代にいたる食を詠んだ俳句をもとに当時の食文化を紹介するユニークな企画展「俳句と食」が開かれている。同展は9月11日まで。昨年夏の「芭蕉たちの食卓」が若者や子どもたちにも関心を持たれ好評だったことから第2弾として企画された。同館によれば子どもたちの夏休みの宿題の自由研究の題材に使われることもあり、親子連れも多い。そのため子どもたちの興味をひくクイズや塗り絵なども用意している。なお8月9日、9月4日の午後1時半からギャラリートークも予定。
展示会場の入口の解説に芭蕉は「今でいう料理男子だった」と書いてある。藩主藤堂家の一門、新七郎良忠に仕え、料理人または台所ご用人、すなわち食料調達などを差配する人だった、と。芭蕉といえば風雅の人、世俗を越えて生きる人のイメージが強いが、元料理男子だったといわれれば、「それなら芭蕉さんも料理にはきっと関心があったに違いない」と思われて、親しみがわく。
「男子厨房に入らず」が当たり前だった江戸時代だが、料理に携わった人だと分かれば、素人と違い、味にはうるさかったのでは、などと容易に想像ができるからだ。
同館の学芸員、高井悠子さんに今回の企画展について聞いてみる。「昨年の企画が好評だったので、夏に食べ物がテーマなら子どもたちにも分かりやすいと思いました。マツタケの実物展示もあります。夏休みはやはり家族連れ。小学生のいる家族が基本です。兄弟の場合、上がお姉さん、下にはまだ小さい弟がいるイメージです。特にお姉ちゃんが宿題のテーマに一生懸命の場合、弟を退屈させないようにするにどうしたらいいか、と工夫しました」
そこで出てきたのが塗り絵。例えば頭巾をかぶった芭蕉。よく見かける宗匠姿である。これに子どもたちが勝手に色を塗っていく。「小さいお子さんにはけっこう人気があるようです。お姉ちゃんの宿題に付き合うお母さんの助けにもなっているようです」と高井さん。
春から順に季節を追って並べられているが、やはり気になるのは芭蕉の真筆。これは最後の冬の季節にあり、テーマは雑煮(ぞうに)。元禄7年(1694)正月20日付で、故郷である伊賀の資産家で門人の意専に送った手紙が掲げられている。達筆なので自分には読めないので、高井さんに解説をお願いする。「百(もも)とせの半ばに一歩を踏出して、とは100歳の半分を過ぎて51歳になったこと。浅漬けの歯にしみわたり、雑煮の餅(もち)のおもしろく覚えそうろうこそ、年の名残も近付きそうろうにやとこそおもひしられ、と続きます……

続きは令和4年8月6日号の伊和新聞に掲載しています。
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