1. HOME
  2. 今週のトピックス
  3. 本を読みたくなる 読書感想コンクール

Topics

トピックス

本を読みたくなる 読書感想コンクール

「高校生ビブリオバトル2022名張決戦」が8月2日、三重県立名張高等学校(名張市東町)のプレゼンテーション実習室を会場に開催された。伊賀地区学校図書館協議会主催、三重県教育委員会共催。名張市教育委員会、伊賀市教育委員会、活字文化推進会議後援。高校生に、ビブリオバトル(書評合戦)をとおして読書の楽しさや効果を伝え、「思考力・判断力・表現力等」を育むことを目的としている。競技は、発表者(バトラー)が推薦する本の話を聞いて、どの本が一番読みたくなったかを投票によって決めるもの。
聴衆は約20名で今回のバトラーは6人。3人づつAブロックとBブロックに分かれ、ブロックごとのチャンプ本を投票で決める。最後に2つのブロックのチャンプ本を投票し、地区のチャンプ本が決まる。ブロックチャンプの2人は12月24日開催予定の県大会(県教育委員会主催)に出場することになっている。発表時間は1人5分。その後質疑応答時間が設けられている。
Aブロック3人は、発表順に髙島陽菜乃さん(名張青峰高校)、藤山陽菜子さん(名張青峰高校)、稲葉歩乃美さん(上野高校)。Bブロック3人は、発表順に稲垣湧太さん(伊賀白鳳高校)、橋本星七さん(名張青峰高校)、岡田萌さん(伊賀白鳳高校)。
Aブロックから競技が始まった。▽髙島さんの推薦は、太宰治著「女生徒」角川書店。朝起床して夜就寝するまでの女生徒の一日が表現されている。美しい文章を朗読して観衆にも目を閉じて味わわせるなど、女子高生の自分にも共感できる綺麗な文章と心理をわかりやすく解説していた。▽藤山さんの推薦は、町田その子著「コンビニ兄弟」新潮社。ホストのようなフェロモンを感じさせる店長が、落ち込んでいる人々を励ます温かさと多様な登場人物の小説で、人の心の温かさを感じさせてくれるところに、自分もそうありたいと、とつとつと話してくれた。▽稲葉さんの推薦は、中山七男著「総理にされた男」宝島社。事故で動けなくなった総理大臣の代わりをするそっくりな俳優が演じる替え玉の話。大きすぎる舞台で演じることになってしまった1人の俳優の頑張りと、そこから見え隠れする彼本来の熱い姿に自分たちの心も熱くなること間違いなしと、滑舌よく推薦した。
Aブロック終了後投票に入り、チャンプ本は「総理にされた男」となり、推薦した稲葉さんがチャンプに決定した。
Bブロックの競技にはいり、▽稲垣さんの推薦は、岡本太郎著「今日の芸術」光文社。今日の芸術は上手くあってはならない。綺麗であってはならない。周りと調和して心地よく生きていくのに疑問を投げかけ、社会に合わせて生きていく虚無感を訴えている。普通の自己啓発とは異なり、生き抜こう、自分なりに生きていこうと思う。すべての人に読んで欲しい、力強い口調で推薦した。▽橋本さんの推薦は、綾辻行人著「Another」角川書店。1990年、夜見山北中学校がピンポイントの舞台。転校生がクラスに馴染もうとする中で感じる呪いのようなものや、普通のかわいい女子生徒のように見えていて、謎めいている登場人物など、ホラーの中で自分の想像と行動が結びついていて面白い。ホラーミステリーの楽しさを語った。▽岡田さんの推薦は、福島正伸著「どんな仕事も楽しくなる3つの物語」きこ書房。つまらない仕事なんかない。その人の姿勢により面白くなったり、つまらなくなったりする。この本を読んで、技術でなく、どのような思いで生きていくかが大切と学んだ。日常の些細なことも感謝していこうと思うようになった。
Bブロック終了後投票に入り、「今日の芸術」と「Another」が同数となり、再度投票の結果、チャンプ本は「今日の芸術」となり、推薦した稲垣さんがチャンプに決定した。
続いて2つのチャンプ本から地区のチャンプ本を決めるための投票が行われ、「総理にされた男」が地区チャンプ本に決まり、稲葉さんが地区チャンプになった。なおA、B2冊のチャンプ本と2人のチャンプは12月24日の県大会に出場する。
稲葉さんは、推理小説が好きで本の世界に入ったが、今ではいろいろなものを読むようになった。好きな作家は米澤穂伸など、現代作家のものが多い、と言う。一方稲垣さんは、海外の小説が好きで、ヘルマンヘッセは殆ど読んだ。特に「デーミアン」が好き、と言う。2人のチャンプの傾向が全く異なっているのが興味深い。
今回6人のバトラーの話を聞いたが、推薦されたどの本も読んでみたくなった。本離れが言われているこの頃だが、大切で貴重な催しであると痛感した。