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名張市極楽寺 春を呼ぶ松明作り

東大寺お水取りのヒノキ切り出し
関西に春を呼ぶと言われる奈良東大寺の「お水取り」二月堂の修二会(しゅにえ)に使われる松明。それを作る「松明調整」行事が2月11日、名張市赤目町一ノ井の極楽寺であった。例年、作った松明は3月12日に「松明調進行事」として行列を作って運ばれるが、昨年に続いて今年もコロナ禍のため中止し、4月にトラックで運ばれる。尚この行事は、道観長者と言われる伝説上の人物が、松明を東大寺に調進し続ける事を遺言し、それを守り続けている名張市の無形民俗文化財である。
今年で774年続いているこの行事を支えているのは、地元住民でつくる「伊賀一ノ井松明講」48人と、協力している市民団体「春を呼ぶ会」20人。その他合計約70人が「松明調整」の作業者。
中川拓真住職(53)の安全祈願法要の後、約1㌔㍍離れた松明山に入り、高さ約30㍍のヒノキを前にして、吉野山金峰山寺優婆塞の亀本清芳氏(74)のホラ貝が森に鳴り響き、ヒノキが切り倒された。山岳宗教と仏教の混交の名残が伺える、荘厳な行事であり、いのちへの敬いと感謝の祈りに深い感動を覚えた。
早速、年輪を数えると樹齢は80年であった。長さ80センチ前後の丸太にし、手分けして極楽寺境内に運び降ろし、それを積み上げた。再びホラ貝と法要のあと、松明とするために樹皮を剥ぎ、鉈で縦に寸断し、1枚が長さ36㌢、幅9㌢、底辺0・9㌢のくさび型の板状に切り揃えた。それを束にまとめて20束の調進用松明が出来上がった。本堂の縁に丁寧に積み重ねられた。
新しく就任した伊賀一ノ井松明講の森本芳文講長(71)は「コロナ禍の中、無事進んでよかった。今年で774回目を数えるが、とにかく継続しなければならない。道観長者の尊い遺言を伝えるため『永遠の継続は歴史なり』の思いで頑張っていきたい」と語っていた。