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命の尊さは国境を越えて…地蔵院青蓮寺で

今年もこの日がやってきた。「戦争」という名の下に、何百万という人間が命を落としていった。あの悲惨な戦争終戦から今年で76年。国民の大多数が戦争を知らない今だからこそ、現実に起こったことを語り継ぎ、未来に向かって平和をつなぐ決意を新たにする日、8月15日。
B29が青蓮寺に墜落
昭和20年6月5日朝、神戸を爆撃した米軍戦略爆撃機B29の9機編隊の1機が、名張市上空で日本の戦闘機の攻撃を受け、青蓮寺山中に墜落。搭乗員11人の内2人は即死。パラシュートで降下した残りの9人の内3人は奈良県内で、6名は名張市内で地元住民に捕らわれた。(警察等の取り調べの後、9人とも処刑)
このB29は墜落直前に、地蔵院青蓮寺(名張市青蓮寺)上空を火を噴きながら通過し、境内に破片の一部が落下したのを見た耕野一弘前住職(当時33歳)は、破片を拾い集め、本堂に安置した。
「戦争の犠牲者に敵も味方もない」との思いで供養をしたが、名張市の人口2万9000人の内、1190人の若者が戦死している状況下においては、なかなか住民には理解を得られない。
前住職の思い引継ぐ
しかし、前住職の思いを何とか継ぎたいと、耕野一仁現住職が地元青蓮寺の遺族会や地区役員等へ働きかけを続け、理解と協力を得て、戦後60年が過ぎた平成18年6月に、B29墜落現場に「B29搭乗員11名追悼碑」を、翌19年には「米兵の氏名、階級、年齢等を刻んだ石碑」を建立するに至った。
コロナ禍での式典
15日、午前10時、本来であれば墜落現場で行う予定であった「平和の祈り」も降り続く大雨のため途中の道が倒木で通行できないことから、急遽地蔵院本堂での開催となった。
はじめに、戦争の犠牲者に対して全員黙とうを捧げ、リコーダーとバイオリンによる日米国歌の演奏が行われた。次に米兵11人への追悼のことばを耕野住職が述べた。住職は墜落当時の様子や異国の地で命を落とした11人への心を痛めた思いなどについて、そして米兵11人をはじめ戦争で犠牲となった人々へ追悼と、戦争を憎み、平和の大切さを後世に伝えることを使命と感じると述べ締めくくった。次に、在名古屋米国領事館マシュー・センザ―首席領事より届けられた追悼と感謝のメッセージが読み上げられた。
コロナ感染拡大が懸念されるため、昨年に引き続いて参加人数を少なくし、感染防止対策を万全にしての実施で、地元及び檀家代表30人ほどの参加であったが、米兵と地元の若者の死を悼み、平和への祈りを誓い、献花を行った。
その後、第2部として「平和の集い・平和の鐘」が行われ、名張ユネスコ協会顧問の辻本進氏から、「B29墜落について」と題して、当時小学生であった辻本氏が墜落の様子を自分の目で見、感じたことについて体験談を紹介した。そして参加者は、寺院内の梵鐘を76回打ち鳴らし、平和への誓いを新たにした。
集いに参加していた元裁判官の佐藤洋一さん(78・名張市百合が丘)は「今の住職は、命を落としたら敵も味方もないといった前住職の思いを受け継ぎ、平成18年から平和の集いを行っている。山中にはまだ飛行機の破片もあるのでそれらを集め、追悼している。人の命の大切さと戦争を起こさないという決意を新たにする思いで毎年参加している」と語った。
なお、正午には名張市内の全ての神社や寺で、平和の鐘が打ち鳴らされた。