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あでやかな天平衣装で天武忌 名張市夏見 福典寺

名張市夏見の真言宗福典寺(坂東瑞祐住職・57)で9月8日、昨年に続いて2年目となる天武忌(天武天皇追善法要)が行われた。天武天皇の娘・初代斎王として伊勢神宮に仕えた大来皇女(おおくのひめみこ)が、父を供養するために建立を発願した昌福寺が、夏見廃寺であると言われており、建立されたのは725年。来年2025年は建立1300年の記念の年にあたる。同寺は歴史的に夏見廃寺を見てきた寺として、昨年から天武忌を行っている。
福典寺は和銅年間(708~715年)に建立され、聖武天皇の勅願所として男山(夏見山・現在の展望台付近)にあったが、天正伊賀乱の災禍で焼失し、現在の地に移ったと言われている。夏見廃寺とは、同じ夏見にある寺院というだけでなく、ほぼ同時代に建立され同じ時を経てきたこともあり、大来皇女の遺志を引き継いで、1300年記念の天武忌に向けて法要を続けている。同時に夏見廃寺出土と同様の塼仏(仏を浮き彫りにして焼いたタイル)を230枚作成し、同時本堂正面の欄間や壁面に貼り詰める計画を進めている。金箔貼りの輝く塼仏の現物が本堂に展示されていた。
この日は檀家の人々36人が(男17女19人)天平時代のあでやかな衣装に身を包み、黄金衣装の僧侶6人を先頭に、色とりどりの美しい法要の列を作り広い境内を練り歩いた後、本堂に入り法要が始まった。中央付近にひときわ目立っているのが大来皇女。読経の声が響く中、女性2人の篠笛が奏上され、秘仏の薬師如来と十一面観音の御開帳。続いて6人の僧侶の中央に大来皇女が立ち、十一面観音に向かって「本願表明」を読み上げた。「父天武天皇の菩提を弔うため当時の夏見の人々の協力もあり、689年発願し、725年に完成した。その後火災で焼失したが、人々の願いは引き継がれ、今も続いている。そのお陰で本日ここに法要をすることができるに至った。この地の安寧と国家安泰、地域発展を祈る」。最後に全員が順に焼香し、併せて一般参列者約50人が焼香し法要は滞りなく終了した。
大来皇女の大役を果たした男山みどりさん(47)は「夏見廃寺や福典寺があった男山には祖父が土地を持っていたり、母親も『皇女(ひめみこ)の会』に入っていたりして、縁があったのかなと思う。大役をするのが自分でよいのかと考えて緊張したが、無事に果たせて良かった。天平衣装も華やかで気持ちが良かった」とほっとした表情で明るく話した。
坂東住職は「名張の歴史を皆さんに知っていただいて、それを伝えていくのにこの行事が役立ったのではないかと思う。一番は、参列者の皆さんに喜んで頂いたのが何よりの供養」と安どの表情で話していた。