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おかえり、芭蕉さん 令和6年度 第78回芭蕉祭

俳聖・松尾芭蕉(1644~94年)の命日にあたる10月12日、俳聖殿(伊賀市上野丸之内)で第78回芭蕉祭が行われ、約600人が参加した。
式典に先立ち、岡本栄伊賀市長と(公財)芭蕉翁顕彰会(野口俊史会長)の人々は、芭蕉の遺髪を納めた上野農人町の愛染院・故郷塚の墓前で法要式典を行った。その後上野市駅前の芭蕉翁銅像、旧上野市庁舎前の芭蕉翁文学碑「自然」に献花・献果し、式典に臨んだ。
今年は6年ぶりに、芭蕉祭フェスティバルバンド(48人)、子供合唱団(12人)、市民合唱団(61人)が復活し、式典の要所要所を感動的に彩った。岡本市長は「今年は芭蕉翁生誕380周年の記念すべき年。『おかえり、芭蕉さん ふるさと伊賀へ。』をテーマに様々な記念事業に取り組んできた。多くの市民が芭蕉翁への思いを新たにするとともに、郷土への誇りを強くする期間となったと思う。これに満足することなく、今後も俳諧文化を次世代に伝える使命を果たさなければならない」と式辞を述べた。
優れた俳文学関係著書に贈られる文部科学大臣賞には、尾崎千佳・山口大学人文学部教授による「西山宗因の研究」(八木書店)が選ばれた。西山宗因(1605~1682)は肥後八代城主の家臣であったが、主家が改易となり浪人となった。その後大阪天満宮連歌所の宗匠となるが、俳句においても談林派を築くなど、連歌師、俳諧師の2つの立場に生きたといわれる。選考委員は、「従来の研究誌を刷新する、宗因伝記研究の金字塔」と評価した。
尾崎さんは「研究16年、本にするのに7年かかった。1年前の今日、夏には出版しているところを、まだ研究していた。75歳の時の宗因を研究していたが、動き回る宗因は私のことを考えてくれない。それは真実の雫に触れる神のような時間だった。神の恩寵のような雲一つ無いこの日、宗因の影響下に芭蕉が俳諧の歩みを始めた伊賀の地で顕彰して頂いて、宗因の名は広まることになると思う」と挨拶した。なお尾崎さんは、第72回芭蕉祭で同賞を受賞した「西山宗因全集」全6巻の編集委員の1人でもあった。
特選句の受賞者を代表して東京都世田谷区の野上卓さんが「国民文学というものがあるのは、日本と英国だけ。英国にはシェイクスピアがあり、ストラトフォードのシェイクスピアシアターは今も残っており使われている。俳句が海外に出るときに、根拠になる場所が重要。シェイクスピアはストラスブールがあるし、芭蕉さんはこの伊賀の地。こういう会を継続的にやっていただき、俳句を世界のものにする力になっていただきたい」と挨拶した。尚、野上さんは「埋め立てる闇を揺さぶる牛蛙」など3句が特選になった。
閉会のあいさつで岡本市長は「俳句は、平和あるいは環境という今日的課題を考えさせ、思い起こさせてくれる。ユネスコの文化遺産登録は少しずつだが進んでいる。ご声援ご尽力を頂きたい。芭蕉祭の最後に一句詠むという、禍々しい伝統を作ってしまったのは私です」と言って笑いを誘い「読まれしく今また新た翁の句」と詠んだ。
また芭蕉祭に合わせ周辺では、ニューでレトロなニュートロ芭蕉祭が開かれ、各地からゆるキャラが集まって俳句選手権を行ったり、芭蕉に因んだグルメ販売などがあった。