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作陶60年の軌跡 新歓嗣さん特別展
伊賀市在住の陶芸家、新歓嗣(かんじ)さん(80)の特別展「新歓嗣-作陶60年の軌跡」が10日から、伊賀市ミュージアム青山讃頌舎(うたのいえ)で始まっている。会期は2月10日まで。
新さんは大阪市出身、大阪芸術大学クラフトデザイン陶芸科卒業。1971年岸和田市に工房を持ち作陶に取り組んだが、薪窯で作陶したいと1975年伊賀市に移り築窯した。
今回は20代の頃のモダンな作品から、大皿、花器、茶碗等の他、この10年間ほど作製している風神・雷神、飛天香炉、普賢・文殊、大日如来など様々な仏像系作品が展示されている。これらの作品はせいぜい高さ20㌢前後の小ぶりな作品だが、実に自由で伸び伸びしており、時に悪戯心やユーモアを感じさせ、しかも精巧。例えば風神・雷神はなんとも愛嬌があり、その上勢いがある。円環花器の中央には如意輪観音の像があるが、裏返すと天照大神。新さんは「神仏混淆」と言ってすましている。深沙大将の裏側には洞穴のような細工があり、小さな観音が立っているが、「十字架を持たせてマリア観音」という遊び心。良寛和尚の庵である「五合庵」には良寛さんが火鉢に手をかざして座っている。壁には掛け軸が掛かるなど、パノラマの一部を見ているようだ。お話を聞くと、大変豊富な仏教の知識をお持ちであることがうかがえる。大きな「伊賀大壺」や「伊賀壺」には釉薬が固まって目玉のような小さな球が光っているが、そのために窯の中で横倒しにして焼いた。貝の模様をつけるために下に貝殻を敷いて焼いたが、制作に当たっての柔軟な心が分る。「先にスケッチをしてその通りに作品を作るようなことはしない。思いついて作っているうちに変ってくることもあり、何か後ろから押されてこうなったことが多い。ことに『大日如来』の時は、自分が作っていて自分が作っていないような感覚だった。違う人、祖先が手を貸して作らされて出来上がってしまった感覚で、特別な愛着がある」という。
新さんの仏の表情は全て可愛らしく、故穐月明さんの作品と実に相性が良い。今回は新さんの作品が約60点と穐月明作品が29点展示され、見事にコラボしている。「尊敬している穐月明さんの作品とご一緒出来て大変幸せ」と話していた。新歓嗣×穐月明コラボ展「交わりし縁とその想い」と言うサブタイトル。「古くから親交があった2人の作品を見比べながら、その縁と想いをじっくりお楽しみください」と学芸員の穐月大介さんは話している。
25日午後1時30分からギャラリートーク(要予約15人)があり、19、26日の各日4回、新さんの茶盌で味わう茶会(要予約各会6人・400円)もある。火曜日休館で観覧料一般300円、高校生以下無料。お問い合わせ・申し込み先は、伊賀市文化都市協会・青山ホール(0595・52・1109)まで。