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四季折々の風情を楽しむ 青山讃頌舎 穐月明の花と木と
伊賀市ミュージアム青山讃頌舎(あおやまうたのいえ)で、春の通常展「四季折々~穐月明の花と木と」が4月10日まで開催されている。
穐月明(1929~2017)は和歌山県高野山生まれ、京都市立美術専門学校(現在の京都市立芸術大学)で日本画と洋画を学んだが卒業間際に見た清の金冬心に魅せられ、独習で水墨画の世界に入った。師もなく、派閥にも属さず、賞を求めない独自の世界を切り開いた孤高の水墨画家。孤高と言いながらも、幼い頃から身についた仏教の世界を背景に、優しさと生命への愛に満ちあふれ、親しみを込めた画風は多くの人に愛された。今回は春を迎え、水墨画家秋月明の世界を十分堪能できる展示となっている。
初めに、きっぱりとしたモダンな椿の赤と、野仏の「椿花屏風」に迎えられる。「冬から春へ・椿と牡丹」の展示11点から四季折々が始まる。色のない水墨画なのに色を感じ、明るい光を感じる。「白磁壺の牡丹」は墨で描かれた大きな牡丹だが、真っ赤な色が見えるようだ。「鉢中の白椿」平鉢に椿の花が浮いている。小魚が数匹泳いでいて、その影が鉢底に映っているが、鉢の模様と区別がつくか作家に試されているようで面白い。
次に「移ろう季節の花と木と」の展示で、それぞれの季節で美しく装う花と木の作品10点。「枝垂れ桜」は桜の下に筵を敷いて、説教している坊さんと小僧。その話をのんびり聞いている4人の大人、その内の1人は居眠りしているようだ。後ろでは子どもが犬と話しているなんとも長閑な風景。しかも絵の表装がシワシワのままなので、ますます大らかな感じがする。学芸員で子息の穐月大介さんが、作家のコレクションの水石を使い絵の前に岩と小舟の風景を作っている。「野の不動尊」は田舎の子どもが頑張っているような、可愛いくて怖くない不動尊。「行水仔犬」はふくよかな母親が、子どもを盥に入れて頭から水を掛け行水させている。仔犬が盥の縁に手を掛けてそれを見ている。背景に咲く一面の朝顔が印象的。
次は「動物達の四季・花と共に」の展示。人も動物も花と共に巡る四季の作品11点。「母仔犬」母親にじゃれる仔犬が可愛い。「富貴花・猫」穐月作品の猫は、子猫と言えどどこか妖艶である。大介さんの奥様で学芸員の哲(さとる)さんによると「猫を飼ったことはないが、外から入ってきた猫と一緒に寝ていたことがある」とエピソードを語ってくれた。コーナー展示以外に6点の壁面展示があり、展示室には39点の穐月明作品が展開している。
今回初めて展示される作品が15点。大介さんは「今まで幾度も来て頂いている方にも、新しい発見があると思う。やっと迎えた春、穐月作品の四季を味わいに来てくだい」と誘っている。
また、4月6日午後1時から「お花見ギャラリートーク」が予定されている。展示室で作品を鑑賞した後、桜山公園で実際に春の花を探す催し。参加費は400円(コーヒーとお菓子・観覧券込み)。定員15人で要予約。解説は穐月大介学芸員。
「春の呈茶会」も当館茶室「聴樹庵」で行われる。日時は、今月29日、30日、4月5日の10時、11時、午後1時、2時(1日各4回)。呈茶代400円(抹茶・お菓子)。定員は各回12人で要予約。ギャラリートーク、呈茶会ともに申し込みは青山ホール(0595・52・1109)まで。