1. HOME
  2. 今週のトピックス
  3. 宗教者は何をなすべきか 名張市宗教者連帯会・堀内みどり氏講演

Topics

トピックス

宗教者は何をなすべきか 名張市宗教者連帯会・堀内みどり氏講演

宗教・宗派の枠を超え社会活動を行う団体として平成26年発足した名張市宗教者連帯会(地蔵院住職・耕野一仁会長)によるシリーズ「心の時代 宗教が果たす役割」の第7回講演が先月29日、名張市総合福祉センター・ふれあいで行われた。この講演は令和6年度総会記念講演会として行われ、約60人の参加者が熱心に耳を傾けた。
講師は、堀内みどりさん(68)=天理大学附属おやさと研究所主任教授。インド哲学・宗教学博士(ぺナレス・ヒンドゥー大学)。日本宗教学会常務理事、宗教倫理学会評議員。堀内さんは「『宗教者』とは、信仰者として人々をしっかり見守り、社会に何を伝えていくか自覚を持った人」と定義付けて講演を始めた。主題は「宗教者として何をなすべきか:問われていることと求められていること」。
始めに“修行僧たちよ、我に仕えようと思う者は、病者を看護せよ”という仏陀の言葉を示した。「もし、私に仕えたいと思うのなら、苦しんでいる人を手当てしなさい。不安を抱えた人の側にいなさい、何をするかではなく、何処にいるかが大切」と解説した。そして、この言葉を実践している浄土真宗本願寺派が1987年に始めた『ビハーラ活動』を紹介した。
現代社会と宗教
次に「現代社会と宗教」として、「宗教とは何か」「宗教が何の役に立つのか」と問題提起した。江原啓之氏など「スピリチュアル・ブーム」や「パワースポット」の流行「仏像ブーム」「御朱印ブーム」は、宗教が、血縁や地縁、信仰を介して結びついた伝統宗教ではなく、個人単位あるいは小人数のグループで活動する、~すべきという規範を伴わない公的な影響力を伴わない「私事化」している、と捉える一方、オウム真理教や統一教会問題は、宗教嫌い、宗教忌避、宗教不審を招いた。しかし東日本大震災における宗教者ならではの活動の在り方「読経ボランティア」「心の相談室(宗教者・カウンセラー・医療者と活動)「臨床宗教師」による、炊き出し、給水、物資搬送、避難所設立などの活動は、宗教はまだ捨てたものではないと、宗教の役割を自他ともに捉え直す契機となった。
妙好人
次に「信仰するということと妙好人」と題し、宗教者は信仰する者であるという必要と必然、として改めて「信仰者とは?」と問いかけ、「妙好人」の言葉を取り上げた。突然の雨に合って「えらいめにあったのお」と言われて「鼻が下に向いて付いているのでありがたい」と応えた因幡の源左。「ええな せかいこくう(世界虚空)が皆ほとけ(仏) わしもそのなか 南無阿弥陀仏」と信心を詠んだ石見の才市など念仏者の句が紹介された。「妙好人」とは中国の善導大師が念仏者を称えた言葉で、江戸時代、仰誓(ごうせい)和上が篤信の念仏者を「妙好人伝」としてまとめた。
宗教者を見る目
次に「宗教者を見る目」として、比較的安定した今の日本では、宗教者としての揺るぎない姿勢・態度・行動が、人々が描いている宗教者であり「宗教であるということ自体を公益だと考えるべき」と述べた。そこには社会を統合し安定化させる機能(社会維持機能)と世俗的伝統的価値観を打ち破り社会を変革させる機能(チャレンジ機能)がある。東日本大震災では宗教者として生者を救い、死者をも救う活動として「宗教の役割」=「公益」を再確認させた。またオウム真理教と統一教会の布教の仕方や教義について話し、「公益」の対極にある例とした。
おわりに
堀内さんは「宗教は常に人々にとって『活きている』ことが必要」と結んだ。
講演後、宗教者の心得についての記者の質問に「宗教者が教えを実践しようとするとき、向き合う相手に真剣になっていると感じれば、相手も話を聞いてみようという気になると思う。常に妙好人=仏に助けられたものだとか、信仰の元になる思いを感得しないといけないのではないか。信仰者は信仰者であるべき」と強い言葉をにこやかに応えた。