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極楽寺で松明つくり 令和7年第777回松明調進行事

関西に春を呼ぶ行事と言われている奈良東大寺二月堂の「お水取り(修二会)」。それに使われる松明は、名張市赤目町一ノ井の極楽寺から毎年送られており「松明調進行事」と呼ばれている。この行事は、道観長者と呼ばれる伝説上の人物が松明を東大寺に寄進し続けることを遺言して山を残し、それを守り続けている名張市の無形民族文化財。松明を切り出し、束にする調整作業が行われた2月11日、これを支えている地元住民による「伊賀一ノ井松明講」の人々を中心に、協力する「春を呼ぶ会」、県立名張高校サッカー部、議会や市役所の人々など約100人が参加した。また東大寺から、修二会の行者(練行衆)11人のうち2人の僧も参加した。
中川拓真住職(56)が「いよいよ調進行事が始まる。まず今日は木の命をいただく。この大事な木は、私たちの煩悩の炎となって、平和・安寧を願い、一切の反省を観音様に捧げる非常に有り難い火」と話し安全祈願法要を行った。その後全員で約1㌔離れた松明山に入り、既に御幣が巻かれた1本の檜の前で住職が読経、吉野山金峯山寺優婆塞の亀本清芳師(77)の法螺貝が森中に響き渡った。チェーンソーで手際よく伐採すると、木は音を立てて倒れた。いつもの檜より大きいと感じたが年輪を数えると112年、直径56㌢、長さは約35㍍あった。いつもは60~80年のことが多いので、太くたくましく立派な檜であった。これを長さ約80㌢に切断し、1/4に縦割りし、手分けして担いで山を下りた。2往復して運んでくれた名張高校サッカー部の20人が頼もしかった。檜は極楽寺の境内に丁寧に積み上げられ、再び法要と法螺貝の後に全員で焼香し供養した。
松明にするため全員で作業を手分けした。樹皮を剥ぎ、鉈で縦に寸断し、長さ36・3㌢、幅9㌢、底辺0・9㌢の楔形の板状に切り揃え、8枚一纏めにしたものを1把とし、それを10把まとめたものを10束作った。また7枚一纏めにしたものを1把とし、それを10把まとめたものを10束作った。合計20束が本堂の縁に積み上げられ運ぶときは、8枚もの2束と7枚もの2束を1対として青竹の両側に散り付け天秤にするが、これを1荷(か)と呼び合計5荷作る。1荷は約30㌔になり、これらが二月堂に送られる。二月堂で1年間保管され、来年の修二会のクライマックスに二月堂内で行われる秘儀「韃靼の行法」で使うことになる。
作業に参加した練行衆の、東大寺宝蔵院住職の清水公仁さん(34)は「こんなに多くの方が一緒になって作業して頂いていることに驚いているし、本当に有り難いと思う」と話し、東大寺大仏殿福院主の筒井英賢さん(50)は「伝統行事を守る講は、人手不足や高齢化で継続に苦しんでいる所が多いが、ここは高校生が参加して伝統の精神が継続され、皆さんが熱心なのに畏敬の念を覚える」と感謝の言葉を話していた。
松明講の森本芳文講長(74)は「子どもの頃から当たり前のことだと思っていたが、大人になって、実は非常に大切なことをやっていると気づいき、大変誇りに思っている。今年は令和7年、777回目とラッキーセブンが続き縁起が良い。松明は重いが歴史はもっと重い。多くの人のお陰で、5荷20束の松明ができあがった」と安堵していた。
中川住職は「おかげさまで松明が揃った。東大寺が修二会の練行衆の2人を派遣されていることは、この行事が東大寺にとっても大切な行事であること。一連の調進行事が無事進むように祈る」と話していた。
松明調進法要
松明調進行事はこの後3月12日に、二月堂に松明を送る調進行事が行われるが、それに先立ち、二月堂に送る松明を供えて道観長者に報告と安全祈願をする松明調進法要が、同月10日午後1時から同館塚で行われる。
松明調進特別臨時列車
本来は1本の竹の棒の両側に松明を括りつけた荷を担いで極楽寺を出発し、急峻な笠間峠を越えて東大寺に運ぶのだが、近年は特にコロナ禍もあり、トラックで奈良に運んでいた。ところが昨年、松明調進特別列車を企画し、近鉄赤目口駅から奈良までの直通列車によるツアーを行ったところ大好評で、今年も「松明調進行事列車ツアー」が近畿日本鉄道により行われることになった。3月12日、赤目口駅8時46分発➡大和八木駅経由で高の原駅で折り返し➡近鉄奈良駅10時13分着。松明を担いで東大寺二月堂まで行進し、二月堂で解散。旅行代金大人2300円、子ども850円、幼児200円、募集人員120名。お問い合わせ先は、近鉄旅の予約センター(06・6775・3636、平日10時~午後5時30分)、次のQRコードからも申し込み出来る。
当日、松明は伊賀一ノ井松明講の人々により、極楽寺から列車まで運ばれる。