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穐月明「夜の景色」キャンドルライトで鑑賞
伊賀市ミュージアム青山讃頌舎(うたのいえ)で、夏の通常展「夜の景色 穐月明の月と星と」が開かれている。これが「通常展」となっているが、少しも「通常」ではなかった。会場へは、まず暗幕を手でそっと開けて入場する。館内は動線に沿ってキャンドルライトが低く並んでいるだけでかなり暗い。そこに、水墨画家の故穐月明さんが描いた、表題に相応しい夜の風景の作品が並んでいる。
来場者は受付でローソク型のLED球入りキャンドルライトを受け取る(全くローソクの明るさ)。作品をしっかり見るにはライトを近づけ、よく観察しなければならないのだが、受ける印象も強いものになる。
当ミュージアムの学芸員で明さんのご子息・大介さんによると、月や星灯りの夜の風景を明さんは多く描いたという。今回は、満月と森の木菟、林間の星々に照らされる野仏、満月と山、月光に照らされた川や海、不動明王など仏画もあり、水墨画31点と明さんが所蔵した木造十一面観音像、地蔵菩薩像が展示されている。
「月明渡橋」は、空高い満月に照らされた渓谷に、小さな橋が架かっている。ライトを橋に近づけると、小さな人物が犬と一緒に渡っているのに気が付いた。その先に道があり、山の中腹に寺が見える。これからあの寺に帰るのだ。ライトの光で道が浮かび上がってくる。
「追想夜汽車」では、橋を渡る汽車の煙と客車の窓の明かりが、ライト効果で追想のイメージを濃くしている。明さんの童心に触れた気がする作品。
十一面観音の光背が銀色のリングになり、水晶の玉眼がきらりと光る。不動明王は赤く浮かび、怖いような迫力がある。普段の照明では、与えられた作品を有りのまま受け身で鑑賞するが、今回は、作品に積極的に向き合っている気がした。夜の光で色の数も少ないが、見たいところに自分で光を持って向かっているので、自然に集中力が高まっているのかもと感じた。
大介さんは「穐月明が描いた美しい夜の世界の生き物や自然を、キャンドルライトで照らしながら発見し、お堂の中で見るような仏像の世界を実感してください」と呼びかけている。
催し企画
その1として夏休みアート教室「光のアートを楽しもう」が、第1回27日10時~と、第2回8月3日10時~、参加費500円(材料費・観覧料共)で。講師は二紀会準会員の上田慎二氏。アートなランプシェードを作り、出来上がると「夜の景色」会場で点灯する。その2はギャラリートーク「夜を楽しむ」が、8月17日午後1時30分~。解説は当館学芸員の穐月大介氏。暗闇の会場で見どころを紹介しながら案内。
会期は8月18日までで、開館午前10時~午後4時30分、火曜休館。料金は一般300円(高校生以下無料)。お問い合わせ先は、(公財)伊賀市文化都市協会(0595・22・0511)又は、伊賀市ミュージアム青山讃頌舎(0595・52・2100)まで。