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身近に感じる平安の美 源氏物語の美と情趣

紫式部が著した「源氏物語」は、NHK大河ドラマ「光る君へ」でひときわ注目されているが、伊賀市ミュージアム青山讃頌舎(うたのいえ)で開催されている秋の企画展「のぞいてみよう源氏物語の世界展」は、物語とそれにかかわる世界にとっぷりと身を沈めて、1000年前の美の世界を体感できる。期間は10月14日まで。
源氏物語の登場人物はおよそ500人。4代の天皇による約70年間の出来事を描いている。展示は▽成立と享受▽書き継がれた写本▽注釈書▽描き継がれた絵巻▽末法思想と信仰▽漢詩と和歌、最後に▽宮廷の住居と装束の7部門に分けて展開され、質量とも非常に見ごたえあるものとなっている。
源氏物語はかなりの長編にもかかわらず愛読され、数多くの写本が作られた。その中で江戸時代に山本春正による初の絵入り版本「源氏物語」の刊行は一般庶民に流布するのに大きな役割を果たしたもの。大量に製版された工業製品の趣がある。また、長大な物語を短くまとめた梗概書「現事小鏡」なども珍しい。現代では与謝野晶子、谷崎潤一郎、瀬戸内寂聴などによる多くの現代語訳が展示されている。
今書かれたような
源氏物語に憧れた少女時代も含まれている菅原孝標女による「更科日記」の複製は、踊るような書体で、今書かれたように新鮮で非常に親しみやすい。注釈書では蕉風俳諧にも重要視され、江戸時代に最も流布した北村季吟の「源氏物語湖月抄」本居宣長の「源氏物語玉の小櫛」他があるが、何といっても藤原定家による「奥入(複製)」が印象深い。すらすらとした書体の中に朱で書き込みがあるので臨場感が素晴らしい。様々に描き継がれた源氏物語の中には国宝「源氏物語絵巻」(複製)や扇面画の「胡蝶」とともに「あさきゆめみし」「まろ、ん?」「はやげん!」等のマンガの源氏物語もある。「漢詩と和歌」では、源氏物語につながりのある白氏文集や、長恨歌、古今和歌集があり、紫式部とは微妙な感情のある清少納言「枕草子絵巻」が展示されている。最後に特別展示として「女房装束・十二単」と「冠直衣」の男女の衣装がマネキン展示され、華やかな演出となっている。
穐月明作品が会場に穏やかな余裕を演出
展示の要所要所に、源氏物語に登場する寺や仏を描いた穐月明さんの作品が展示されている。穐月明さんは生涯、仏教を大きなテーマとして作品制作していたが、その作品が会場内で、存在感を発揮している。穐月作品はほっとさせてくれるのだ。開館は午前10時~午後4時30分で、料金は一般300円、高校生以下無料。火曜日は休館。
期間中、記念講演会「源氏物語がわかる平安和歌講座」が23日午後2時~青山複合施設アオーネで開催される(予約不要)。また「ワークショップ『木の実を食べる』」が10月13日午前10時から(食材費等1800円・定員15人)が開催される。お問い合わせ先は(公財)伊賀市文化都市協会(0595・22・0511)、伊賀市ミュージアム青山讃頌舎(0595・52・2100)まで。