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鬼を射る!八幡区行事「弓引き祭神事」
名張市八幡区の八幡正八幡宮で1月19日、約400年前に始まったとされる「弓引き祭神事」が行われ、悪鬼退散・人々の健康と幸せ・五穀豊穣を願った。
神事・祈祷のあと、神社の森に設けられた約60㌢角の「鬼」と記された的に向かって矢を射るのは、村神主の田畑和明さん、副神主、氏子総代、区長、執行部の人々10人。的までの距離は20㍍、順番に矢を放ち当たるまで続けるのが習わし。村神主から順番に矢を射るが、普段練習をしているわけでもなく、神事なので、事前の練習は禁止となっているため、なかなか命中しないのが普通だが、一昨年命中させたのは16番目に矢を射た氏子総代の田畑和明さんだった。その田畑さんが、昨年は副神主として2巡目の2番(12番)目に命中させた。その田畑さん(71)が、今年は村神主として1番目に射るということで期待が高まったが、惜しくも当たらず。ところが3番目に射た氏子総代の福地敏昭さん(69)が、見事命中させた!大きな拍手が湧いた。しかし3番目では終わらずに、一通り10番目まで弓を射て、その後は参拝の村の人たちや子どもたちが交互に弓を引いた。
弓引き神事が始まったのには言い伝えがある。400年ほど昔の正月、この八幡村の若者たちが京都見物に行き愛宕神社に詣でた時、1人の侍が弓の練習をしているのを見た。なかなか当たらないので思わず1人が「当たらへんやないか」と言ったところ、運悪く聞こえた侍が怒り、若者に弓矢を渡し「お前が射てみよ。当たらなければ手打ちにする」。覚悟した若者が、八幡宮に祈って矢を射たところ見事に命中し、侍がその弓矢をくれた。以来、毎年弓引き神事が始まったという。
この日見事に命中させた福地敏昭さんは「早く当たり過ぎて申し訳ない。早く当たった分、皆さんにとって良い年であればと祈る」と話した。福地さんは2年前は村神主であった。八幡区は38戸で約120人の住民がいる。人々は神主やその他の役を交代しながら、八幡正八幡宮を400年間守り、20年毎の式年遷宮もしっかり行ってきた。参拝の地元の女性は「自分たちで守っているから、身びいきかもしれないけれど、どこの神社より立派で、心が通じる神社に思える」と話していた。区長の田畑渉(67)さんは「自然災害、コロナ、世界では紛争。それらの厄払いの神事である。3人目で矢が命中したのは縁起が良い。良い年になればと心から願う」と穏やかに話していた。