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忍法赤目プリン開業 赤目観光の起爆剤に
名張市の観光名所・赤目四十八滝渓谷の入り口近くに、カフェ「忍法赤目プリン」が開業した。観光庁の補助金も利用しながら、空き店舗を改装し滝周辺の活性化の一翼を担う。カフェは、市の地域おこし協力隊の川崎智哉さん(25)ら2人と、市内での飲食店経営の経験者との3人で共同経営。8月20日にオープンしたが、川崎さんは「メディアに取り上げて頂いたからか、売り上げも評判も、おかげさまで順調」と話している。
川崎さんは横浜市出身で、昨年10月着任。任期は3年で赤目地区の活性化や、観光振興、地域ブランド商品の創造などが課された役目。着任して早々、紅葉の始まりかけた赤目渓谷を訪れたが、観光地と言っているのに、まるでシャッター街のようにお店が締まっているのに衝撃を受けた。「これは変えないといけない」と心の底から思ったという。元々飲食店経営に関心があり、コロナ禍で観光地の活性化の仕事をしていて、自分の仕事と赤目四十八滝の現状を見た時に「拠点を持つのもありかな」と考えた。3年の任期を終え、名張で活動し続けることを考えると「赤目でお店をやるのも良いかな」と思うようになり、市役所にも相談。昨年11月、渓谷入り口にもっとも近い元食堂を紹介された。
赤目四十八滝の観光客数は、1992年の約34万人をピークに落ち込みが続き、2022年は10万人を切った。名張市では様々な問題に対応して、観光地の魅力を見直し、再生を目指している。その一環で観光庁に「赤目四十八滝門前周辺高付加価値化計画」として補助金申請するタイミングと合致した。地域おこし協力隊の2人に、飲食店経営のノウハウを持つ1人を加えて3人で意見を交わした。同じ観光庁の補助金を活用した岐阜県の下呂温泉を視察した。下呂プリンが売れている。同じ補助金活用の熱海、道後等でもご当地プリンがトレンドになっている。
地盤固めにキャッチーなものをと考えた時、お団子、まんじゅうなど和のイメージの周辺に比べ、洋のコンセプトでプリンに決めた。プリンは、プレーン、抹茶、ほうじ茶、マンゴー、ブルーベリーの5種類(380円から)で、青山高原の養鶏場の卵など地元食材使用を心がけている。プリンのラベルは、どっしりとしたオオサンショウウオの上で忍者が印を結んでいるユーモラスなデザインで、オオガマに乗る児雷也を想像するのは筆者だけか。
今後は、平日に営業している飲食店が少ないことを考え、ハンバーグやランチタイムに対応する方向も視野に入れていきたいという。お店は白を基調に自然と調査する木質で、プレーンなインテリアは川崎さんが基本計画をし、工務店が仕上げた。滝川と周囲の森を眺める大きな窓が心地よい。窓に沿ってカウンター席が並び、テーブル席と併せてイートインは約20席。店内に以前からあったトイレを改装して、ウォシュレット式のトイレを男女それぞれ導入。観光地のトイレはもっと整備されているべきだと川崎さんは言う「トイレが綺麗で使い勝手が良い➡滞留時間に影響➡トイレを使った客が商品をテイクアウト➡商品が美味しい➡又遊びに来る➡観光地(赤目)が賑わい好循環になる」と。
赤目は以前から、地域と観光エリアの人々の交流が非常に少ない。それでも地域の人々は、休日には近鉄赤目口駅の「旅のステーション」で、滝案内のボランティアを続けている。川崎さんは協力隊員として、地域の人達とは日常的に身内に等しい間柄。これからは観光エリアの立場でもあり、両方のコミュニケーションを図れるのは川崎さんしかいない。今までそういう人はいなかった。平日「旅のステーション」は閉まっている。これを活用し拠点化することを考えると、スタートから終わりの「赤目プリン」までつなぐことになる。地域おこし協力隊がつくった「忍法赤目プリン」は、一介のカフェを越えて、これから地域に大きな役割を演じることになるだろう。