1. HOME
  2. 今週のトピックス
  3. 白鳳生 高校生の「建築甲子園」へ出場

Topics

トピックス

白鳳生 高校生の「建築甲子園」へ出場

昨年に続いて全員入賞目指す
三重県立伊賀白鳳高校(緑が丘西町)建築デザイン科は毎年建築設計競技に参加しており、昨年は参加者全員が入賞した。今年も3年生6人が夏休みを利用して意欲的に作品制作を行っており、その様子を取材した。
参加するコンテストは4競技。1つ目は2022年第13回高校生の「建築甲子園(主催・日本建築士連合会、都道府県建築士会)。テーマは地域のくらし―これからの地区センターで、参加するのは辻村颯空さん。
辻村さんは複数の町家を地区センターに提案する。伊賀市に限定して考えると、人口は減少傾向にあるが、他地域や外国からの流入人口は増えつつある。このままでは伊賀市本来の文化が影を潜める。伊賀市本来の文化を残しながら、他の地域や海外の文化も取り入れるようなセンターにしたい。そのために伊賀市内に散在する複数の町家を改修し機能別に分けてセンターとして利用することを提案する。庭を共同菜園とし、採れた野菜等をセンターの食材として利用する。籠りがちな独り暮らしの人は出かけるようになるし、街中にあることで他県や海外からの人も伊賀の文化に触れ、人々が融合する。そのようなセンターを創りたい。住宅地図から起こした家並に、センター機能の町家や庭園の模型を配置すると現実感が湧いてきた。辻村さんは昨年、第12回国士舘大学高校生アイデアコンテスト2021で優秀賞を受賞している。
2つ目の競技は第5回建築都市工学部全国高等学校プロジェクトコンテスト2022(主催・九州産業大学)。テーマは緑を活かした『暮らし』の提案で、参加するのは小野寺芽衣さん。
小野寺さんは緑を主体に住宅を提案する。「樹をとにかく感じるようにしたい!」。まず樹木の配置で風をコントロールする。住宅はその風を受けて、下の階全体から上部に空気の流れを創る「重力換気」の考え方を主とする。従って家の中央は高くする(トンネル効果)。年数を経て樹木が成長すると家の中の空気の流れも変化する。歳を重ねて経年の風の変化を味わえる。模型を見ると中央が高い建物の周辺に低層の建物が取り囲み、樹木の配置と併せて中央への空気の流れを作っている。緑と風と家を、経年も含めて考えているところに新鮮な感覚が伺えた。小野寺さんは昨年、第20回愛知産業大学建築コンペティションで最優秀賞を受賞している。
3つ目の競技はICS DESIGN AWARD 2022(主催・建築・インテリア・家具の専門学校ICSカレッジオブアーツ)。テーマは素(ありのまま、混じり気のない、根源的なそのものらしさ……。あなたが思う「素」から、(中略)「モノ」や「空間」のデザインを提案)で、参加するのは齋藤優奈さん。
齋藤さんの提案は「カスタマイズ×素材」。利用者に合わせてカスタマイズできる素材ユニットを、3㍍×3㍍×高さ2・5㍍の基本ブロックとして考えた。ブロックの組み合わせで、住む人によって形や仕上げを変えることができる提案。ブロックの仕上げは、木質、鉄筋コンクリート、ガラス、鉄骨等からなり、家族の在り方が多様化し流動的な時代に家族の数によってブロックを増減できるし、嗜好や年齢によってブロックの仕上げ素材そのものを変えることができる。合理的でフレキシブルで、量産可能なデザイン提案である。齋藤さんは昨年、第18回星槎道都大学美術学部住宅設計コンクール2021で学生審査委員賞を受賞している。
4つ目の競技は、第14回修成インテリアスケッチコンテスト(主催・修成建設専門学校)。テーマはひかりのインテリアで、参加者は縣俊樹さんと金石琉夏さんのペアと要優里奈さん単独の2組。縣・金石組は「光の煙突」を提案。4階建ての高さの堂々とした四角形の吹き抜けを中心に、四角いユニット型の居住スペースが開放的に組み合わさっている。ゆったりした上からの光の空間に、庭にある池からの風が煙突効果で上昇して光と空気が交歓する。話し声が響くので、家族の存在を感じやすい。大らかな住居の提案である。要さんは「自然光と人工光」を提案。星が美しい土地で、寝室で星が眺められる別荘の提案。街灯(人工光)に照らされた外部から屋内に入ると、廊下は全面に明り取りの格子天井が展開し、寝室に近づくにつれ格子が密になり、目の暗順応を助けるようになっている。廊下や寝室は外光を得るだけで人工照明は備えていない。寝室で星を眺めることに特化したロマンチックな提案である。
指導の花井俊和先生は「みんなの努力が実って良い結果につながれば、本当に良いのに」と祈る気持ちを笑顔で話していた。