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第12回さようなら原発3・11集会 in 名張
原発は必ずなくなると信じて
東日本大震災から12年が経ち、名張市武道交流館いきいき(蔵持町里)で3月11日、「第12回さようなら原発3・11集会 in 名張」(角谷英明実行委員会会長)が開催された。
この日は、2014年に関西電力大飯原発3、4号機の運転差し止め判決をした、当時福井地方裁判所の裁判長裁判官だった樋口英明さんを描いたドキュメンタリー映画「原発をとめた裁判長そして原発をとめる農家たち」が上映された。映画は無音で「原発事故がもたらす被害は極めて甚大である。それゆえに原発には極めて高い安全性が求められる。地震王国日本において、原発に高度の安全性があるということは、原発に高度の耐震性があるということに他ならない。しかし、我が国の原発の安全性は極めて低い。よって原発の運転は認められない」の言葉が表示されて始まった。
映画の中で原発の耐震性の話があり、地震の揺れの単位がガル(※)で示された。実際の地震の数値が表される一方、原子力規制委員会により認可された原発の許容数値も表される。かなり低い数字で、素人でも不安を感じるほどだ。例えば熊本地震1791ガル。東北大震災2933ガルに対し、認可された東北電力柏崎刈羽原発1209ガル。九州電力玄界原発・川内原発に至っては620ガルに過ぎない。一方、原発のコストの安さを主張する人がいるが、コストが安いことと、人の命を守ることは別の話だと気づかせられる。
映画では、太陽光を、発電と農業に同時に利用する試みとして、笹屋営農型発電農場、野辺山営農ソーラー等を紹介していた。通常に見る太陽光発電の無機質に広がる風景ではない。スリット状の太陽光パネルが約2・5㍍の高さで並び、地面は畑となっている。地面にも充分光が届き、真夏には適度な影をつくる。風景としても美しい。これも脱原発の方法の一つだ。
樋口さんはビデオメッセージを寄せ、「原発は断水しただけで事故になる。その事故は想像を絶するものになる。」また「エネルギーコストと事故とを同列に扱うべきではない」とも述べた。
そして東日本大震災の午後2時46分、全員で黙祷した。会場いっぱいに祈りが満ちた。プログラムの最後は「提案と交流」として「原発なくせ三重県民会議」事務局長の唐沢克昭さんの提案があった。提案の内容は「どうして原発は儲かるのだろう」原発運転60年化の閣議決定の恐ろしさが語られた。続いてトリチウム汚染水の海洋放流問題。提案説明の後、質疑応答、意見交換が行われた。
この会場で、福島から避難してきた方と会った。映画に登場する農家の人たちと知り合いだと言う。名前は村上新平さん(64)。三重県の愛農学園で有機農業を学び、事故当時は福島県飯館村で自然農法による農業を営んでいた。自分の思う農園が形になり、建築の棟上げの最中に大震災に合い、全てを失って母校愛農学園に避難した。その後三重県津市美杉町太郎生を拠点に自然農法による農業経営を始め、持続可能な新しいコミュニティを始めている。村上さんは「事故後は頻繁に事故の体験の講演を求められた。当初は人々の関心が深くて原発の危険性を皆が感じていた。原発が無くなる可能性があると思った。しかし近頃は人々の関心が薄れ、岸田内閣の原発回帰に危機感を覚える。しかし、自分の生き方が持続可能な自然農であり、自然に生かされていると思えば理に合わない原発は必ずなくなると信じている」と話していた。
※ガル…観測地点での振動の激しさ・加速度を表す単位。建造物の耐震性能を表す単位としても使われる。