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顕彰会55周年・名張市制70周年 「能楽公演」開催
観阿弥創座の地・名張で11月18日、名張市観阿弥顕彰会創立55周年記念事業、名張市市制施行70周年記念事業の「能楽公演」がadsホールで行われた。
公演に先立ち、プレステージとして、名張子ども狂言の会が、狂言「口真似」と小舞「うさぎ」を演じた。随分練習したと見られ、狂言ではユーモアたっぷりの演技で観衆を楽しませた。
本公演の前に、主催者挨拶として名張市観阿弥顕彰会の山中功会長が「顕彰会55周年、名張市市制施行70周年の節目に行政と共に、アドバンスコープの共催、岡田文化財団の格別の支援、地元企業や諸関係のご支援を頂きました、心から感謝申し上げます。今日は、今年度人間国宝に認定された茂山七五三(しめ)先生、そして片山伸吾先生はじめ、多くの先生方に出演して頂きます。こんな機会はないので、本日は皆さん、じっくりと楽しんで頂きますように」と挨拶した。続いて北川裕之名張市長が、この日のために支援した各団体に感謝の意を述べた後「本日出演の片山伸吾先生には、先日も子供たちに能の話をして頂きました。茂山七五三先生にも観阿弥生誕の地名張で長らく指導していただいています。七五三先生は人間国宝に認定され、名張にとっても非常に喜ばしいことです。本日、狂言は七五三先生、茂山宗彦(もとひこ)先生、能の方は、片山伸吾先生と皆様方で演じて頂けます。なかなか見ることのできない、プロの皆さんの演技を見る素晴らしい機会を頂いたことに感謝します。最後まで皆さん楽しんでください」と話した。
名張能楽公演
始めは「仕舞」、演目は「自然居士(じねんこじ)」。自然居士を演ずる片山峻佑さんが舞い、4人の地謡の人々の声に、会場は「能」の世界に引き込まれていった。次に、能楽シテ方観世流能楽師の田茂井廣道さんが登場し、この日の演目について分かりやすく解説した。
「狂言」の演目は「寝音曲」。太郎冠者を茂山宗彦、主人を茂山七五三。謡の上手い太郎冠者を、何とか謳わせようとする主人。それに逆らう太郎冠者。駆け引きが面白く会場全ての人々が、2人の名人による狂言に、我を忘れて聞き入り見入っていた。
休憩後の舞台は「能」となり、演目は「融(とおる)」。融とは左大臣源融のこと。主な配役は、前シテ/塩汲みの老人と後シテ/源融の霊を片山伸吾。ワキ/旅僧を有松遼一、アイ/都六条辺りの者を鈴木実。太鼓、大鼓、小鼓、笛、後見2人の6人の地謡で演じられた。
旅の僧(ワキ)が六条河原の旧跡を訪れると、自分を塩汲みという老人(前シテ)がやって来る。僧が訪ねると、ここは昔、源融の屋敷であった。遠い浪速の浦から海水を運ばせ風流を楽しんだが、今は、荒れ果ててしまっていると老人は嘆く。続いて老人は僧の求めに応じて東の音羽山から、西の嵐山迄名所を教えるが、塩を汲む有様を見せて姿を消す。そこに近くに住む都人(アイ)が表れ、この屋敷跡の來暦を話す。夜、僧が寝ていると融の大臣の亡霊が表れ(後シテ)、昔を思い出しながら舞を舞い、名残を惜しみながら月の世界に帰って行く。動きの大きくない舞と、囃子方の楽器の音、掛け声、それに地謡が組み合わさり、オペラのよう。緊張感があり美しい。能は、現場で本物を見るのが一番良いと感じた。
元町に住む30代の女性は「初めて能を見ました。音楽が素晴らしい。大鼓(おおかわ)の甲高い響き、小鼓の丸い音、2つの楽器の掛け合いと合いの手の声も凄い。小太鼓のバチ裁きと、笛が雰囲気を作っていて音楽で動きの少ない舞の意味が分かる。塩汲みの老人が、赤と白の艶やかな衣装の融の大臣の亡霊になって出てきた時はドキドキしました。凄い芸術、病みつきになりそう!」と大感激の様子であった。本物の能に魅せられた熱烈なファンを獲得。有意義な公演となった。