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名張市 極楽寺で松明作り 第775回松明調進行事
関西に春を呼ぶと言われる奈良東大寺の「お水取り」二月堂の修二会(しゅにえ)に使われる松明を作って送る一連の行事を「松明調進行事」と言う。そのうち松明を作る作業を「松明調整行事」と言い2月11日、名張市赤目町一ノ井の極楽寺でその行事が行われた。例年は「松明調進」として3月12日に行列を作って奈良に運ぶが、コロナ禍のため4月に入ってトラックで運ぶのが3年続いている。
この行事は道観長者と言われる伝説上の人物が、松明を東大寺に寄進し続けることを遺言して山を残し、それを守り続けている名張市の無形民俗文化財。
今年で775年目となるこの行事を支えているのは、地元住民による「伊賀一ノ井松明講」の人々約50人、協力している市民団体「春を呼ぶ会」20人、3年ぶりに名張高校サッカー部15人(うち先生2人)、名張青年会議所の人々など合計約100人が参加した。
中川拓真住職(54)の安全祈願法要の後、皆で約1㌔離れた松明山に入った。目印の御幣を巻いた高さ約30㍍のヒノキを前にして住職が読経し、吉野山金峰山寺優婆塞の亀本清芳氏(75)によるホラ貝が森に響き渡る。切ったヒノキが近くの杉の枝に引っ掛かり、倒れないという思わぬアクシデント。倒すにはワイヤーが必要で、担当者が道具を取りに帰り、1時間以上ロスタイム。この樹はやや小ぶりだったので、隣の同じような高さのヒノキも伐採した。伐採後年輪を数えると、先に切った方は樹齢75年、後の方は樹齢70年であった。これを長さ80㌢に揃えて切断し、手分けして担いで下り、極楽寺境内に積み上げた。1本20㌔以上の重さがあるが、サッカー部の高校生の働きが有難い。再び法要とホラ貝の後、松明にするために全員協力して加工する。樹皮を剥ぎ、なたで縦に寸断し、1枚が長さ30㌢、幅9㌢底辺0・9㌢の楔形の板状に切りそろえ、それを束にまとめて20束の調進用松明にして本堂の縁に積み重ねた。いつもは午後3時頃には仕上がる作業が、アクシデントのため午後4時半頃に無事終了した。
松明講の森本芳文講長は「思わぬ手間がかかったが、無事運び終わって良かった。高校生が来てくれて有難かった。誰も怪我がなくて良かった。事故が起きると、行事は続けられなくなる。伝統を守るのは当り前のようだけれど、大勢の人に助けてもらえるのが有難い。皆さんのおかげです」と行事の無事終了を喜んでいた。