「令和の学校」ってどんな学校 No62 小中一貫校・義務教育学校を考える
わが国では小学校は6年間、中学校は3年間が当たり前である。しかし、今回奈良県東部の学校を訪問すると、校長の説明の中に「本校の7年生は」とか、「前期課程では」といった言葉が聞かれた。名張市・伊賀市の学校も含め、「令和の学校」の仕組みはどのようになっているのか、改めて整理してみたい。
戦後の1947(昭和22)年、教育基本法や学校教育法が制定され、義務教育は小学校6年、中学校3年の9年間の学校教育の修業年数が決まった。以来我が国では、6・3制が定着してきたが、近年、小学校と中学校の制度の違い(授業時間が45分から50分に、学級担任中心の授業から教科担任制に等)により、中学校入学後学校にうまく適応できない生徒の増加やいじめ等の急増など、いわゆる「中1ギャップ」が見られるようになった。また、学習内容が急に難しくなり、「学校や勉強がおもしろくない、わからない」等の生徒が多くなったとも言われている。こうした環境の変化や児童生徒の発育・発達の早熟化を考慮し、学校の制度をはじめ、教育改革の必要性が叫ばれた。2006(平成18)年教育基本法や学校教育法が改正され、新たに義務教育の目的や目標が規定されたのを踏まえ、2008(平成20)年には学習指導要領が改訂された。
それによると教科・科目等において、小・中・高を通じ、発達や学年の段階を踏まえ、円滑な接続を図ることを重視する改善が図られた。かつては、小中一貫(教育)校といえば、国立や私立の学校がほとんどであった。しかし、児童生徒の発達に対応していくためには、小中の連続性や系統性を踏まえた教育が重要である。こうした状況において、東京都品川区や広島県呉市など市町村立学校においても、小中一貫(教育)が行われるようになった。
小中連携教育、小中一貫教育の広がり
文部科学省は、小中連携教育を「小・中学校が互いに情報交換や交流を行うことを通じて、小学校教育から中学校教育への円滑な接続を目指す様々な教育」、小中一貫教育を「小中連携教育のうち、小中学校が目指す子供像を共有し、9年間を通じた教育課程を編成し、系統的な教育を目指す教育」と定義づけている。2000年代に行われた15歳を対象とした国際的な学力調査(OECDによる学習到達度調査・PISA)において、我が国は読解力や科学的リテラシーなどが、先進諸外国と比較して、低下傾向にあることが判明し、大きな社会問題となった。その結果、国際的に質の高い教育を実現するために、義務教育の質の向上を図ることを目標に、9年間を通した教育の充実の重要性が認識されるようになった。少し資料が古いが、同省が実施した「小中一貫教育等についての実態調査」≪2014(平成26)年5月現在≫の結果によると、全国1743市区町村のうち、小中一貫教育を実施しているのは211市区町村(12㌫)、小中連携教育のみ実施しているのは1147市区町村(66㌫)。2007(平成19)年10月の教育再生会議で示された資料によると、小中一貫教育に取り組んでいる地方公共団体が99≪2006(平成18)年9月現在≫であることを考えると、8年間で2倍以上に増えている。
義務教育学校
2015(平成27)年、学校教育法の一部が改正され、小学校と中学校の9年間の義務教育を一貫して行う「義務教育学校」が同法第1条に規定された。いわゆる「1条校」として明記され2016(平成28)年度から、小中一貫教育を実施する学校として創設されることとなった。この義務教育学校は、小学校課程と中学校課程までの9年間の義務教育を一貫して行う学校で、1人の校長が校務を司る。学年の区切りは、「6・3制」の他、「4・3・2制」、「5・4制」など、地域の実情にあわせて設置者が決めている。児童生徒の学習は、小学校・中学校それぞれの学習指導要領を準用するため、現行の小学校(6年)と中学校(3年)にあわせて、前期課程と後期課程となっている。こうしたことから義務教育学校は小中一貫教育校のひとつと言える。また、学校の少子化が進んでいる山間へき地・小規模校において、学校の廃校(統廃合)問題と関連して、義務教育学校として、地域に学校を存続させている現状もある……
続きは令和4年12月3日号の伊和新聞に掲載しています。
※ご購読は名張市上八町1482 伊和新聞社 電話63-2355まで。定価月760円(郵送地区別途)、一部200円。