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推理作家協会賞受賞 郷土史家・中相作さん

15年がかりで渾身の研究編纂
名張市の郷土史家・中相作さん(71)が、「江戸川乱歩年譜集成」(藍峯舎・らんぽうしゃ)で第77回日本推理作家協会賞(評論・研究部門)を受賞した。中さんは1995年から名張市立図書館の乱歩資料担当嘱託を務め、江戸川乱歩リファレンスブック1『乱歩文献データブック』、同2『江戸川乱歩執筆年譜』、同3『江戸川乱歩著書目録』のリファレンスシリーズ全3巻を刊行した。08年嘱託を辞した後も研究を続け、評論集『乱歩謎解きクロニクル』では、第19回本格ミステリー大賞評論・研究部門を受賞。
今回の受賞著書「江戸川乱歩年譜集成」はリファレンスブックシリーズ4となる。内容は3部からなり、1部は「伝」で日本経済新聞に連載した「私の履歴書(1956)」及び「彼」と題する自伝(1936~37執筆)。2部は「譜」で年譜だが、いきなり生誕から始まるので無く、ペンネームの元となったエドガー・アラン・ポーの生誕(文化6・1809年)に始まり、祖父の生誕(文化7・1810年)と続く。「近世近代の時代の中で、乱歩が生まれ育った背景が分かれば面白いのでは」と中さんは意図を話した。時代を辿り、乱歩の死(昭和40・1965年)で年譜の記述は終わる。作家や友人などの貴重な証言がちりばめられ、180ページの「読み物」としての年表になっている。3部は「録」で乱歩の自伝「探偵小説四十年」を基に、乱歩が残した夥しい数の回想記、書簡、座談、広告文など自伝的要素のある「断片」509点を選び出し、年代順に配置し再構成した400ページ近いボリューム。新たな「乱歩自伝」とでも言うべきもの。
「乱歩は、探偵小説ベストテンに入るような、まともな探偵小説を書いていない。明治20年代に生まれ、西洋の文化文明に憧れた近代人として挫折も味わいながら、本格的な探偵小説は書けなかった。亜流が故に今もファンが多いのだが……。少年物の探偵小説を書きながら、それでも探偵作家クラブを創設し、それは今の日本推理作家協会になっている。上から目線みたいだが『よくやった』と労ってあげたい気がする。同じ名張に生まれ、乱歩とは不思議な縁を感じるが、多くの乱歩のファンやミステリーファンと繋がりが出来た」と中さん。「そろそろ乱歩じまい」と言うが、大きな業績を上げた中さんに(本紙にも「乱歩あれこれ」を連載頂いている)世間は「乱歩じまい」を許すだろうか?
「江戸川乱歩年譜集成」はA5版632ページ、限定250部、定価24000円。昨年4月刊行され既に完売済み。名張市立図書館と津市の県立図書館で閲覧できる。

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