いが再発見 No208 芭蕉翁生家が保存修復完了
俳聖松尾芭蕉(1644~1694年)ゆかりの地に立つ伊賀市の史跡「芭蕉翁生家」(上野赤坂町)の耐震補強などが終了。4年ぶりに一般公開中だ。工事はあくまで保存修復が目的だった。以前は見学するだけの生家が、今後は主屋の座敷に上がることができ、寺子屋形式の句会も企画されている。この改修を記念して同市上野公園内にある芭蕉翁記念館では企画展「芭蕉と月見の献立」が開かれている。6月26日まで。もっとも芭蕉の「月見の献立」の展示はすでに終了(現在はレプリカ)しているが、代わりに芭蕉が兄にあてた遺言状などが現在、公開されている。真筆「月見―」は今秋9月に改めて展示の予定。
旧伊賀市役所から東へ500㍍ほどのところに史跡芭蕉翁生家はある。改修された家に入る。土間のすぐ右が畳を新しくした座敷。8畳、4畳、8畳の3部屋。ぶち抜けば20畳の広さになる。案内役の芭蕉翁顕彰会の職員、稲森宏和さん(62)によれば、改修前と違うのがこの座敷だという。「今までは芭蕉の生家をただ見てもらうという、見学の感覚でした。これからは貸室として利用。実際に座敷に上がって文机(ふづくえ)を前に俳句が詠めるのです。オープンしてさっそく、20人の句会の申し込みがありました。今後は大人や子供向けの句会『小さな寺子屋』も計画しています」
芭蕉の命日である10月12日には毎年、芭蕉祭が開かれ、これまで75回を数える。全国から俳句を募集する芭蕉翁献詠俳句があり、その中に英語俳句(ハイク)もある。外国人に英悟で俳句を作ってもらうのだ。「今では1万とか2万句とかの応募があります。外国でもけっこうな人気なのですよ。クロアチアとかセルビアなど東欧が多かったのですが、ここ数年で急に増えてきたのがインド。原因は分かりませんが、インターネットの普及が原因かもしれませんね」
3行という世界一短い詩で人生や自然を語ることが最高の魅力だという稲森さんは日本人にもっとその魅力を知ってほしいと願っている。「芭蕉の生誕地ですが、伊賀は今では忍者人気にはるかに及びませんから」
俳聖芭蕉の出生地である伊賀市民にもっと俳句を楽しんでもらいたい。これまでのように単に過去の芭蕉翁をしのぶだけでなく、自ら句作を経験、さらに1歩進んで芭蕉の俳句の精神に親しんでもらおうという気持ちがあるのだ……
続きは令和4年6月4日号の伊和新聞に掲載しています。
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