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いが再発見 No222 金石文研 長瀬地区を調査

秋のいち日、名張金石文研究会は市内最南端部にある長瀬地区の由緒ある寺社を巡った。不動寺で樹齢600年を超えるカヤの巨木の下で初めてカヤの実を拾い、住職夫人からその食べ方を教わる。境内で縁起のいい厄除け石を見つけ、その背後に下半身だけが残った石仏を発見。探すと欠けた上部は別の場所にあった。上長瀬では神社ともお寺とも判断のつかない奇妙な建物の中に2㍍はある巨大な石仏が2体も安置されているのに驚く。うち1体は舟形石に刻まれた阿弥陀如来立像で、火災にあって頭部以外は欠けたまま。それを見た会員たちは不動寺の上半身のない石像も元はこんな姿ではなかったか、と想像力を働かせた。
比奈知ダムを過ぎて国道368号線を名張川沿いに南に下ると旧道脇に国津神社がある。その隣が不動寺である。小さな石段を上がると左手にカヤの巨樹。幹回り5㍍10、樹高18㍍はあるという。でかい。しかもカヤの木である。珍しい。かつて囲碁・将棋好きに聞いたことがある。「最高の碁盤はカヤの木で作ったものだ」と。同寺の住職夫人、石島二美(ふみ)さんに誰か欲しがっていた人はいなかったか聞いてみる。「以前、業者さんが買いたいといってこられたことがありました。もちろん売りはしませんでしたが」
二美さんによると、寺にはカヤの木が付き物だという。「カヤの実からは油がとれます。これは仏前の灯明(とうみょう)に使われます。だからお寺には必要だったのです。油は絶やすことができませんから」
「油断するな、の語源はここからきたと聞いたことがある」と誰かがいう。みんなよく知っているものだ。カヤの木の下にたくさんの実が落ちている。緑の皮に覆われて、中から茶色い実が見える。食べられると教えられたので、拾って表皮をむく。中からアーモンドに似た実が出てくる。直径1㌢、長さが2㌢くらい。あまり大きくない。
二美さんに食べ方を教えてもらう。「実は今、灰汁(あく)抜きをしているところ」と玄関先に案内される。ザルに盛られたカヤの実と横のポリバケツには灰汁抜き中のカヤが入っていた。  作り方は①カヤの実を洗う②草木灰を水に溶いて灰汁抜き③洗って乾かす④殻をペンチで割り実を取り出しフライパンで炒(い)ると出来上がり。味はどうなのか。小さいころおやつとして食べた会員が教えてくれる。「アーモンドナッツみたいな食感だった」
二美さんによると、炒ったカヤの実を砂糖でまぶし、おやつとして売っているところもあるという。
住職夫人とカヤの実の談議をしていると、金石文にくわしい今西正己さん(68)はすでに境内を観察していた。巨樹の近くにある六地蔵を指さして「これ灯篭形をしていますが地蔵尊石仏。伊勢方面には多いですが、名張にあるのはここだけ。珍しいものです」……

続きは令和4年10月15日号の伊和新聞に掲載しています。
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