いが再発見 No198 橿原・今井町の町並みを歩く
前回、大和三山を巡ったが、今回も名張から急行で30分の近鉄・大和八木駅のすぐ近く、駅の西側に広がる江戸時代の町並みを色濃く残す橿原・今井町を歩いてみる。16世紀後半から江戸初期にかけ寺内町として発展。現在も760軒のうち500軒が江戸時代の建物だという古い町並み。その上、無電柱化工事が行われ、電線のない風景が現れ、景観が一変した。江戸時代にタイムスリップしたような、その雰囲気を求めてNHKの朝ドラ、映画、CMなどの撮影が目白押し。メディアの隠れた人気スポットになっているという。どんなところか。のぞいて見た。
この日、ガイドさんと待ち合わせしたのは今井まちなみ交流センター・華甍(はないらか)。近鉄橿原線・八木西口駅から歩いて5分のところにある。1903年(明治36)の建物で、奈良公園にある帝室博物館(現奈良国立博物館旧館)に次ぐほど古いという。
町を案内してくれるのは「橿原観光ボランティアガイドの会」の加藤千恵子さん(66)。ガイド歴20年のベテラン。そのうえ、名張にもかつて住んだことがあると聞いて心強い。
さっそく町の中に入る。まず行ったのは中町筋にある旧米谷(こめたに)家。ここは今井町に9軒ある重要文化財の1つで、18世紀半ばに建てられた。もとは金物商だという。その前の道路には、どこにでもあるはずの電柱が1本もないのだ。さえぎるものがないから、はるか向こうまで見通すことができる。これは新鮮な経験である。加藤さんによれば27年前、1995年に起きた阪神大震災がきっかけだったという。「ここは重要伝統的建造物群保存地区(通称・重伝建)です。震災で電柱が倒れたり、電線が垂れ下がったりしたら、町はどうなるのか。何とか電線を地下に埋められないだろうかという要望が地元から出ました。ところが電力会社は最初、工事するには道路が狭すぎる。費用が掛かり過ぎる、などと渋ったそうです。ところが、10年を掛けて2・3㌔の工事が完成。風景が一変したのを見て、今では無電柱化を推進する側に回っていると聞いています」
米谷家のある中町筋は2013年から翌年にかけて放送されたNHK朝ドラ「ごちそうさん」で、大阪・天満の町並みとして撮影された場所なのである。
同家に入ると広い土間があり、かまどが5つ並んでいる。加藤さんの説明が入る。「5つ口のかまどがあるでしょう。これは大和かまどとか、勾玉(まがたま)かまどとかよんでいます。首飾りの勾玉に似ているからでしょうか」
見るとかまどは確かに湾曲している。それにしても5つもかまどがあるとは。当時、従業員もたくさんいたに違いない……
続きは令和4年2月19日号の伊和新聞に掲載しています。
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