ご当地ナンバー導入 伊賀市単独で申請
「走る広告塔」として地域の魅力を発信する地域の観光資源をデザインした地方版図柄入りナンバー(ご当地ナンバー)について、岡本栄伊賀市長は12月5日の定例記者会見において、名張市との共同申請を断念したことを明らかにした。
導入申請の条件として、単独自治体では、登録台数が10万台以上、軽自動車を含めると17万台以上となっているが、複数自治体では、登録台数が5万台以上、軽自動車を含めると8万5千台以上となっている。伊賀市の登録車は約4万1千台、軽自動車3万9千台を合わせて約8万台であり、単独では申請要件を満たしていない。一方、名張市の登録車は2万8千台、軽自動車2万6千台を合わせて、5万4千台であり、両市を合わせればクリアできる。
伊賀市からは、「伊賀」ナンバーで申請をすることを名張市に提案し、協議をしてきたが、意向表明締め切り日の11月30日に北川裕之名張市長から「申し訳ない。市民の理解が深まっていない」との申し入れがあった。これを受け、伊賀市では現時点では申請要件は満たしていないが、ナンバー名を「伊賀上野」として単独申請の意向を県に申請した。岡本市長は「本来、『伊賀』には名張も含まれているが、2004(平成16)年の「平成の大合併」に名張市が参加せず、以降名張市民は『伊賀市と名張市は別』という意識が広まったため、名張市民には『伊賀』ナンバーが受け入れられないのでは」と述べるとともに、「『伊賀名張』ナンバーは私の考えに入っていない」とした。
両市の9月議会において、議員から「伊賀市と名張市の共同申請によるご当地ナンバー導入」に関して一般質問が出され、岡本市長は「(名張市民には)名張ファーストが徹底して、若い人たちは、伊賀の人間である以前に名張の人間であるという考えが沁みついている。そういう意味で、1本より2本、2本より3本の矢というように私たちのアイデンティティをもう一度結びなおし、確かな力にする必要がある。そういう意味から『伊賀ナンバー』、いや『ご当地ナンバー』が大変重要である」と答弁している。また、北川市長は「どういう効果があるのか、両市や伊賀地域のアイデンティティを含め気運の醸成を前段でしっかりやっていかないと、納得感がないといけないと思う。その上で意向調査などを行っていきたい」と述べている。両市長とも導入には前向きであると思われるが、北川市長にとって、「気運の醸成」「意向調査」をこの2か月間で行うことは不可能であったと言える。今後、「ご当地ナンバー」の申請等についての有無や見通しは不明であるが、「伊賀市は最大のパートナー」との北川市長の発言に見られるように、両市が抱える諸課題の解決のため、連携協力の必要性は増すと考えられる。「ご当地ナンバー」での共同申請は実現できなかったが、この地域に住む市民のアイデンティティを大切にしながら、相互の理解が深まり、市民にとってプラスとなるよう両市長の行政手腕に大いに期待したい。
なお、伊賀市は申請要件を満たさない状況での導入意向表明となったが、国土交通省からは「該当しない」との回答があり、事実上の門前払いとなった。市では、申請要件の緩和についても、県に要望している。