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伊賀再発見 No187 「いがぶら」企画で山渓寺へ

座禅を組んで瞑想・筆文字で想い表現
俳聖芭蕉が若き日に家臣として仕え、俳句の手ほどきを受けた藤堂新七郎良忠(俳名蝉吟=せんぎん)の墓所のある伊賀市上野恵美須町の山渓寺でにわか座禅を組み、瞑想(めいそう)にふける中で心に浮かんだ文字を真っ白い紙に筆文字にした。現在、行われている「いがぶら」のイベント企画の一環。座禅をしながら半眼の向こうに見える青空、静寂の中に響く鳥の声の大きさに驚く。その後、それぞれが気に入った言葉を筆で表現した。その意味を参加者が語り合ったが、コロナ禍の中でストレスをためながら必死に生きてきた思いや頑張りを聞き、思わず涙が出そうになる。いい一日だった。
伊賀鉄道・上野市駅を下車、メーン道路の通称銀座通りを南に10分ほど歩いたところに山渓寺はある。山門をくぐると手入れの行き届いた庭の左手に本堂。住職の長谷川真爾さん(60)によると創建は1615年(元和1)。今から406年前。大坂夏の陣の起きた年である。「合戦で亡くなった家臣を弔うために藩祖・藤堂高虎が建てた寺と聞いております」
由緒のある寺なのである。そういえば山門前に説明板があり、藤堂新七郎家の墓所と書いてある。高虎と大坂夏の陣に出陣した侍大将、初代新七郎をはじめ代々の新七郎が眠っているのをはじめて知る。良忠が芭蕉の主人であることは聞いてはいたが、ここがその墓所だとは知らなかった。なんだかお寺が急に身近な存在になってきた。
座禅に参加したのは10人。本来は本堂で座禅を組むのだが、この日は秋晴れ。「今日は天気がいいので、ぬれ縁に出てやりましょう」と長谷川住職。時計、ネックレスなどの装身具は外すようにと、指示される。時間は15分間。2枚の座布団の上の1枚を半分に折り、その上であぐらを組む。「目は半眼。体は動かさない。呼吸を整え、肩の力を抜いて」
住職のいわれるままにあぐらを組む。左右を見ると、すでにみなさん、瞑想に入っている。慌てて半眼になり前を見る。前方には塀。その上に青い空と白い雲。左手には手入れされたマツ。その向こうに土蔵の白壁。耳を澄ますと、鳥のさえずりが聞こえる。静寂が辺りを支配しているのだ。静かなだけに、かえって周りの音が大きく聞こえる。遠くで選挙カーのマイク音や話し声さえも。
長谷川住職によると、座禅は無心にならなくていいそうだ。「素人に無心になれといっても無理です。それよりも一事について深く考えることが重要なのです。その方が効果的。もう1つは10分間瞑想するだけで、自分自身の気持ちが変わります。そこを知ってほしい」
これを聞いて座禅に対する見方が変わった。座禅のまねごとをしたことはある。そのとき、無心になれといわれたが、かえって妄想がわいて困ったことがあったからだ。1つのことに集中する。これならできるかもしれない……

続きは11月6日号の伊和新聞に掲載しています。
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