伊賀再発見 No196 島ケ原の地酒「しまがはら·元頭」
特産品を開発して地域の活性化を図ろうと3年がかりで島ケ原地域まちづくり協議会が取り組んできた伊賀市島ケ原の地酒、純米大吟醸「しまがはら・元頭(えとー)」が完成。そのお披露目会と初売りが1月30日、島ケ原会館で開かれた。会場では醸造を担当した大田酒造の大田勲社長(58)が「飲みやすい酒にできあがった。香りがいいので、冷やがおすすめ」と味を保証した。地元の酒店、島ケ原温泉やぶっちゃ、県下のイオン10店舗などで販売する。地酒作りに没頭してきたメンバーは「今後3年間が勝負。さらに改良して特産品として認められるまで頑張りたい」と気を引き締めていた。
会場には予約した市民が多く訪れ、この日だけで720㍉㍑入り、1本1980円(税込み)が500本売れる人気だった。
地酒の名称「しまがはら・元頭(えとー)」のネーミングがなんともユニークだ。地元には観菩提寺(正月堂)という名刹(めいさつ)がある。東大寺の別院で、2月に行われる修正会(しゅしょうえ)は、3月の東大寺二月堂の修二会(お水取り)に先立って行われることから、お水取りのルーツともいわれ、1300年続く行事。豊作と厄除けを祈って住民が毎年、飾りのついた大きなモチを献上するときに一斉に上げる掛け声で、春を呼ぶ声でもある「エトー(元頭)」から取られた。
地酒の名称を募集したところ65件の応募があり、「島ケ原」「正月堂」「エトー」など5つが候補に上がり、その中から2つが選ばれ、それを合体したネーミングとなった。「えとー」のアイデアを出したのは地元の画家、岩名泰岳(いわな・やすたけ)さん(34)。もともとは酒のラベルのデザインを頼まれていたが、ついでに名称も考えてよ、といわれて応募した。旧上野市に生まれ、10歳から島ケ原に住んでいる岩名さん。この土地が大好きだという。ラベルは絵画のたらし込み技法を使った素朴な色合い。酒名の字体も同様だ。「育ってきた島ケ原がだんだん過疎化していく。しかし酒米ができるほど豊かな里山の風景がここにはある。そんな自然の美しさをイメージしました。県外の方もこのお酒を飲んで島ケ原を知ってもらうきっかけになればいいですが」
まちづくり協議会(まち協)の企画担当で、今回の地酒造りの発案者でもある山菅善宣(よしのぶ)さん(65)はどんな思いでここまでやってきたのだろうか。「島ケ原も人口流出による過疎化、高齢化が進み、現在は2000人に減ってしまった。遊休農地も増えている。これはなんとかしなければとの思いが強かったです」……
続きは令和4年2月5日号の伊和新聞に掲載しています。
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