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安本亀八の肖像彫刻6躯 市指定文化財指定

幕末に生人形師として活躍していた安本亀八が、1860(万延元)年頃から数年間、名張に滞在して肖像彫刻を創っていたことはよく知られているが、そのうち6躯が、名張市指定文化財として指定。指定されたのは、( )内は所有者で①木造小野三左衛門坐像(宗教法人西方寺)②木造法印泰山坐像(宗教法人極楽寺)③木造岡村甚六坐像(岡村加壽代)④木造角田半兵衛坐像(角田勝)⑤木造角田みか坐像(角田勝)⑥木造角田富之坐像(角田勝)。なお角田半兵衛坐像には、亀八筆とする肖像画が伝わっている。「富教(とみたか)絵図」と記されていて半兵衛富教像作成時の下絵と思われる。
伊賀まちかど博物館はなびし庵(すみた酒店)の角田勝・久子ご夫妻の話によると、幕末の男尊女卑の世相の中で「夫婦像」は非常に珍しく、妻の、みか像は正座して着物の裾を後ろに広げ(引きずり)、帯を前結びにし、手に扇子(現亡失)を持つ、女性の最高の礼装姿だという。夫婦像は保存状態が良好だが、子息の富之像は、塗装の剥落などやや痛みがある。後年になって久子さんが庭の祠の中に安置されているのを発見したもの。角田半兵衛富教は3代目、富之は4代目、現在の勝さんは9代目になるという。
郷土史家の富森盛一は「生人形師 安本亀八」の中で、①小野三左衞門を、禄三百五十石の名張藤堂家の家老。遺族が名張を去るに際し、菩提寺の西方寺に納めた。②法印泰山坐像は、病気療養中その姿を彫らせた。衰弱した顔つきで定印を結んでいる。③岡村甚六は荒物商を営みつつ学を究め徳が高かった。その子甚次郎は蒲田梁州の「観瀑図誌」刊行に尽力。④⑤の夫妻像について、この像の前を黙って通ることができないほど如実に表現されている、とそれぞれ紹介している。

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