老いと介護を楽しんで
名張市武道交流館いきいき(蔵持町里)で8月6日、生涯学習講座「介護を楽しむ」「明るく老いる」が開催された。講師はOiBokkeShi主宰の菅原直樹さん。主催は三重県文化会館、名張市、名張市教育委員会。
認知症介護に演劇の手法を取り入れ、認知症の人との心地よいコミュニケーションを体験しようとするもので、まず導入部で、参加者は「遊びリテーション」という体を使ったコミュニケーション遊びで、演劇の楽しさを実感する。プログラムに入り、介護者役と認知症役に分かれて演じる即興劇の「イエスアンドゲーム」。認知症の人の日常性からずれた発言や願望に、話を合わせて「受け入れる方法」と正面から否定して「正そうとする方法」。「ボケを正すべきか受け入れるべきか」。この日は「食事に行こう」と促す介護者に「阿部ちゃんが来るから待っている」と言い続ける認知症役の女性の熱演があり「受け入れる方法」の有効性が証明された。続いて「認知症の人を囲んで」ゲームが行われた。グループで話し合っている中に一人の認知症役の人がいて、その人は与えられた本の中のセリフしか話してはいけないルール。彼は空気を読まずに、セリフをどんどん口にする。ほかのメンバーは「肯定」と「否定または無視」の態度で対応する。「否定または無視」の場合、認知症役の声が自然に大きくなる。「肯定」の場合、声が小さくなり、コミュニケーションの兆しが見えるようになった。
共感し受け入れる
菅原さんは「認知症の人の言動は正すべきなのか?」の問題に「言動を正すと元のお婆ちゃんに戻れるのではないか?放っておくとそのまま遠くに行ってしまうのではないか?と思いがちだが、放っておく方が良い」と言う。「論理や理屈ではなく、感情に寄り添う気持ちが大切」「三大介護の、食事、排せつ、入浴がスムースにできると、当人もみんなも気持ちが良い。記憶障害・見当識障害・判断力低下の症状を、介護者が能動的に受け止め、共感し、演技(うその演技も大切)で受け入れることで、徘徊や妄想などの症状を減らすことができる」と≪受け入れる≫ことの大切さを語った。
蔵持町から参加の70代男性は「老々介護の準備のつもりで受講したが、20年前に亡くなった母のことを思いだした。ある日『地球儀から人が出て来る』と言いだした。正そうとして辛く当たったりした。孤立させてしまったようで、今日のような知識があれば……とつくづく思った。つい昔のことを思い出してしまった。とは言え、大変参考になった」と受講の意義を話していた。 当日のアンケートには「こちらの関わり方で、介護を楽しむことができるのが分かった」「介護をしているときに、この知識があればよかったのに」「ケアマネージャーをしているが、参加して不安が解消した。」「受け入れることの大切さを感じた」等の回答があった。受講者は16人。職員5人。年代は20代~70代と幅広く、充実して楽しんだ講座であった。
なお、OiBokkeShi( オイ・ボッケ・シ)と「三重県文化会館「介護を楽しむ」「明るく老いる」アートプロジェクト」は活動の一環として劇団「老いのプレーパーク」を結成。劇団員は三重県内のシニアや介護に関わる仲間で、最高齢は94歳!その名張公演が予定されている。
公演タイトルは「あたらしい生活シアター」作・演出は菅原直樹さん。公演日時は11月27日午後2時開演。会場はadsホール(名張市松崎町)。料金はチケット制・全席自由で一般1000円、22歳以下500円。チケット取り扱いは、三重県文化会館チケットカウンター(059 ・233・1122)、名張市教育委員会事務局 文化生涯学習室(0595・63・7892)、名張市adsホール(0595・64・3478)及びWEBチケットサービスエムズネットhttps://p-ticket.jp/center-mieまで。9月24日より発売となっている。