伊賀市美術博物館 基本構想を答申
伊賀市美術博物館建設準備委員会は4月23日、めざす姿・基本理念と方向性や、美術博物館の立地場所等々について岡本栄伊賀市長に答申した。当委員会は「市美術博物館建設準備委員会設置条例」(2023年4月施行)により「新しい芭蕉翁記念館の機能を含む美術博物館の建設に関し検討する」として設置された。
同委員会は昨年7月に諮問を受け、市民アンケートの実施や本年1月には中間案を作成し、2~3月にパブリックコメントの募集を行うなどを挟みながら、計5回の会合を重ねて検討してきた。この日の答申には、藤田真一委員長(関西大学名誉教授)と四辻秀紀副委員長(名古屋経済大学特別教授)が出席した。
答申では「芭蕉翁のふるさと」を誇りとし、「伊賀の歴史文化」を守り、持続可能なまちづくりに貢献する「ひろがる未来への拠点」をめざす姿とした。
基本理念と方向性に「育む」「伝える」「集う」「守る」の4つの理念を示し、「育む」では、市民や子供たちが歴史文化に触れ成長する創造の拠点となり、地域への愛着と誇り、創造性、人材を育てる場となる。「伝える」では、情報発信の拠点となり、賑わいの創出や俳句でのつながりを生かし、全国に伊賀市の魅力を伝える。「集う」では、交流の拠点となり、多様な価値観や違いを知り理解し、誰もが身近に伊賀の歴史文化に触れ親しむ場所を目指す。「守る」では、俳諧・俳句関連の資料を保存・管理して未来へと引き継ぐ拠点となり、体制を整え、専門的調査研究を行う場とするとした。立地場所は、旧桃青中学校跡(上野丸之内・面積12、480平方㍍)を優位とするとしたが、建設には都市計画法の定める用途地域の変更が必要とのこと。
答申にあたって藤田委員長は「資料を保存管理する上で、何より不可欠な収蔵庫がないのが重大な問題。俳諧関係の2人以外に学芸員がいない点も喫緊の課題」と意見を付した。答申を受けた岡本市長は「答申を尊重する。用途地域の変更は県の管轄なので、県の協力を求める」と話し「『伝える』『守る』は大切な問題だが、『集う』『育む』が当市の文化行政の中で足りなかった最大の問題である。美術博物館の建設は、未来の人たちへの1つの大きな投資。経済的観点から判断する問題ではない。得てしてハコモノとか金食い虫とか意見が出てくるが、あまりにも短絡的な考えだ」と述べた。
市は今後、この答申を市の基本構想とし、7月から基本構想を具現化した基本計画に着手、今年度中に策定し基本設計に進み、2027年度着工、30年度開館の見通し。