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名張で学ぶがん医療 1人1人の遺伝情報に合わせがん治療

がん患者の遺伝情報(がんゲノム)を調べて治療に生かす最新の医療体制についての講演「がんゲノム医療と総合がん治療センター構想」が5月21日、約130人の聴衆を集め名張市武道交流会館いきいき(蔵持町里)であった。名張市がん・難病相談室が主催する「名張で学ぶがん医療」の第13回目。講師は三重大学医学部附属病院ゲノム医療部ゲノム診療科の奥川喜永(よしなが)教授。
ガンは殆どの場合、ゲノムの変化を原因としている。ゲノムは体をつくるための設計図のようなもので、1人1人異なっている。普通の遺伝子検査は、医師が必要と判断した場合に1つ又はいくつかの遺伝子を調べて診断や薬を選んで治療する。しかし1人1人ゲノム情報が違うので、薬の効く人と効かない人が出たり、再発しやすかったりする。そこで登場するのが、がん化を引き起こしている遺伝子の変異を、多数の遺伝子を同時に調べて検索する検査「がん遺伝子パネル検査」で、次にその結果遺伝子変異が見つかり、その遺伝子変異に対して効果が期待できる薬を見つけ、その薬の使用を検討する治療を「がんゲノム医療」と言い、個別化医療の1つである。
また子や孫など親族も含めて、「こんながんになりやすい」が分かるので、家族の命を守る先制医療(先制攻撃)の時代に入ったとも言える。三重大学付属病院では、米国に検体を送り、調べられた結果を院内(臨床遺伝専門医を始め、ほぼ全ての診療科の医師や専門看護師、薬剤師、臨床検査技師)で患者1人1人について議論し、治療方法を検討する。現在、遺伝子変異に対応する薬が明らかになるのは約1割と言う。診療科を横断した判断のため、乳がんの治療なのに、その人のゲノムでは肺がんの薬が適正であるという判断もあるという。
三重県内のがんゲノム医療体制の説明になり、厚生労働省が指定するがんゲノム医療拠点病院は全国32か所で、三重県では三重大学付属病院のみ。しかし、患者が名張市立病院で受診している場合でも、同病院と連携して、がんゲノム医療を受けられるなど、県内どこでもこの診療を受けられる体制となっている。質疑の時間に「92歳の母親ががんと診断された。まだ元気だが、主治医から高齢のため手術はしないと言われて落ち込んでいる。これからどのようにすれば」との質問があり「元気な生活を続けるための治療」として肺炎や感染症の予防も併せて「諦めずに、目標を決めること。例えば旅行をする、その目標を達成すれば次の目標を立てるなど」と生き方も含めて、カウンセラーのような回答があった。
この日の受付や司会進行には「がんを明るく前向きに語る・金つなぎの会」の人々が約10人携わっていた。がん・難病相談室室長の広野光子さんに、がんの治療前や治療後にカウンセリングを受けて、元気づけられた人達ばかり。広野さん自身もがんを克服している。
講演会の後は「癒しのコンサート」として、ひまわりコーラスの童謡や唱歌の合唱と、後藤誠司さんのハーモニカの独奏があった。

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