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いが再発見 No181 饅頭の神さまを祀る林神社

名張や伊賀市内には老舗の和菓子屋さんがたくさんある。その食べ歩きを各観光協会が紹介していて人気があるが、日本で最初にあんこ入り饅頭(まんじゅう)を作った人を祀(まつ)る全国唯一の神社が奈良市内にあるのをご存じか。近鉄奈良駅から歩いて数分のところにある漢国(かんごう)神社の境内にある林(りん)神社で、毎年、春に行われる「饅頭まつり」には全国の菓子業者や一般の甘党ファンが参加して大にぎわいとなる。当日、先着500人に紅白まんじゅうが配られるが、このめでたいまんじゅうも、実はここにルーツがあると聞いて驚いた。
近鉄奈良駅で下車、奈良公園と逆の西南方向に4、5分歩いたところに饅頭神社がある。つい見逃しそうだが、よく見ると建物の間にはさまれて赤い鳥居がある。右側に「漢国神社」、左に「饅頭の祖神 林神社」と刻んだ碑。まっすぐ10㍍ほど先の門をくぐると正面に漢国神社の拝殿。その右の小さな社が林神社である。社殿の両側には鏡モチもどきのまんじゅうオブジェがしつらえてある。一見、何の変哲もない社だが毎年、4月19日の「饅頭まつり」には全国から菓子業者や一般の参拝者が訪れ、大変なにぎわいを見せる。梅木春興(はるおき)宮司(74)にその様子を聞いてみる。「このお祭りは1956年(昭和31)から始まったのですが、だんだん大きくなり、今では近畿一円、東京など関東方面、愛知、西は岡山などの大手のお菓子屋さんが参加してくれています。もっとも九州の業者さんは来られていないようですが」
当日は参拝者にお茶と紅白まんじゅうがふるまわれることから行列ができるほど人気がある。この日、和菓子、洋菓子、せんべいなどたくさんの菓子が神前に供えられるが、梅木宮司によれば、「特にまんじゅうは、あんこを自慢する業者が多いです。食べてみると微妙に味が違うようですから」。 では林神社の祭神とはだれなのか。それは1349年(貞和5)に中国から渡来した林淨因(りん・じょういん)だと梅木さんはいう。「京都・建仁寺の禅師をしたって来日した僧で、漢国神社の社前に住んでいました。中国には肉入りの饅頭(まんとう)がありますが、肉食が許されない禅僧が小豆の甘いあんこを肉に見立て、小麦粉を練った白い皮にあんこを包んで蒸しまんじゅうを作った。これが日本で最初のまんじゅうです」
林(りん)神社と呼ぶのは中国からの渡来僧だったからだと、今回初めて知ったことである。その当時、菓子といえば、果物か「ぶと」と呼ばれる米粉を練り、油で揚げたギョウザの形をした素朴な菓子しかなかった。春日大社では今でも神饌(しんせん)として使われているという。だから、あんこ入りは画期的なお菓子だったに違いない……

続きは9月25日号の伊和新聞に掲載しています。
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