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伊賀再発見 No194 「伊賀百筆」 編集を振り返って

通巻31号 惜しまれつつ休刊
伊賀の地域性にこだわり続けてきたオピニオン文芸誌「伊賀百筆」が昨年末、31号で惜しまれながら休刊した。俳聖芭蕉や作家、横光利一を生んだ伊賀の文芸の伝統を維持しようと1995年(平成7)に発刊。約27年間、伊賀に関わる問題や歴史、人物を取り上げ、またその追悼を特集。特に市町村合併、市庁舎建設問題ではオピニオン性を発揮、世論喚起にも努める。それらの実績が認められて2015年には「三銀ふるさと三重文化賞」を受賞。公的にも評価されてきた。創刊時から編集長を務めてきた北出楯夫さん(81)と副編集長の福田和幸さん(73)に、これまでの歴史を振り返ってもらった。
北出編集長は「伊賀百筆」の創刊時をこう話す。「地元企業の上野印刷が社会に貢献する文化活動の一環、いわゆる企業メセナとして始めたのです。社長は私の中学の同級生で、彼から編集を担当してくれといわれて。編集長をやったのは、そんな因縁もありました」
北出さんは当時、市の職員だった。仕事をつづけながら編集業務も行う。いわば二足のわらじを履き続ける。北出さんの「―百筆」メモによれば、第1号は「芭蕉と伊賀」を特集。2号は「戦後50年」、5~7号は横光利一の「没後50年」、「生誕100年」などを掲載。いよいよこれからテーマを広げて内容を充実させようというときに、会社から「もうこれ以上は支援できないからギブアップする。10号で援助を打ち切る」と通告を受けたのだ。
「このまま発行を続けるか、やむなく打ち切るか」の岐路立たされる。その結論は「10号ではもったいない。何とか続けよう」となった。
2003年3月発行の11号からは教員、会社員、主婦ら12人の有志によって自主運営されることになる。公的財政援助は一切なし。登録会員の購読料、投稿者の協力金、企業の広告賛助金などで発行を続ける。ところが問題が1つあった。これまで会社が担ってきた発行所の機能をだれが果たすかということ。印刷は印刷所で、編集は責任をもってできるにしても、広告を依頼し、本も売らなければならない。金銭の出納の問題もある。えてして原稿を書く人には、その仕事を苦手にする人も多い。北出さんは当時、63歳。市役所を退職したばかりだった。そこでついに決心する。「自分が編集長と発行人をやるしかないだろう」……

続きは令和4年1月22日号の伊和新聞に掲載しています。
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