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クラフトデザインの先駆者 日根野作三展

戦後日本を代表する陶磁器デザイナーの日根野作三(1907~84年)の功績を紹介する「日根野作三展」が、伊賀市ミュージアム青山讃頌舎(うたのいえ・別府)で始まった。地元ではあまり知られていないが、今回の展示を企画した陶芸家の小島憲二さん(70)は「日本の陶芸シーンを作った伊賀の人・日根野作三を知って欲しい」と熱い思いを語っている。
日根野氏は現在の伊賀市西高倉に生まれ、東京高等工芸学校(現千葉大学工学部)で学んだ後、小森忍の山茶窯(ツバキガマ・瀬戸市)にデザイン担当として勤め、1933年には小森と共に国立京都陶磁器試験所に入所し、デザイナーとしての才能を開花させた。戦後はフリーのデザイナーとして活躍を始め、信楽、瀬戸、美濃、常滑等多くの陶磁器産地でデザイン指導を行った。小島さんによると日根野氏は「陶磁器のレベルを上げたいと熱心に思い続けて努力した人で、その土地土地の職人の能力を引き出した。しかもデザイン画だけでなく、釉薬の配合や造形デザインのノウハウまで指示した分かりやすいものだった。そして地方の技法や能力を大事にした。そこでしか出来ないものを引き出した。特に美濃はそう思う」と話す。
地元伊賀では1941年から2年弱、佐那具陶磁器研究所にいたが足跡としては残っていない。「当時の伊賀は土鍋の生産が盛んで、日根野氏のデザインはあまり理解されなかったのではないか」とも小島さん。
展示では日根野氏の描いたスケッチと、それに従って職人が作ったものを見ると、どれほど洗練された作品が生まれたかが良く分かる。また人間国宝の濱田庄司氏が「戦後、日本の陶磁器デザインの80㌫は日根野氏がつくられた。」と日根野氏の活動の広さと奥深さを称賛した言葉として小島さんは引用している。
今回の展示は、小島さんが歩いて集めた日根野氏のデザインした作品と、日根野氏作の楽焼など約80点。いずれも伊賀市に残っている教育委員会や個人が所蔵する作品で「日根野氏の作品展を伊賀でやるのが自分の使命。ここまでこられたのは、皆さんの協力のおかげと感謝している。没後40年になるこの機会に日根野氏の素晴らしさを知って欲しい」と小島さんは熱心に声をかけている。
4月20日午後1時30分からは、三重県立美術館学芸員の髙曽由子さんによる「伊賀における制作」と題したギャラリートーク、27日午後1時30分から、小島憲二さんによる「思いつくままに」と題したギャラリートークが予定されており、各回15人で予約制。また弟子の日根野正美代さんの創作茶盌で抹茶を楽しむイベントが5月3・4・5日の午前10時、11時、午後1時、2時に企画されている。呈茶代400円(お抹茶・お菓子)、定員各回8人で場所は讃頌舎聴樹庵、何れも予約が必要。 開催は5月6日迄で火曜日休館、開館は午前10時~午後4時30分。入館料一般300円、高校生以下は無料。お問い合わせ・予約先は伊賀市文化都市協会青山支所(0595・52・1109)まで。