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三重県埋蔵文化財センター出前講座「土器を作ってご飯を炊こう」

第2回親子で学ぼう「なばり学教室」≪ドキドキ大昔のくらし~土器を作ってご飯を炊こう~≫が、9月23日、10月28日、11月3日の3回に亘って、名張市郷土資料館(安部田)3階講座室及びプール横校庭で開催された。名張市教育センター主催で3回で1講座。
縄文や弥生時代の人々が、土器を作って生活していたことは授業で教えられるが、土器を作ることは殆どないし、ましてや、その土器で煮炊きするのは、研究者や専門家がすることのように、何となく思っているのが普通ではないだろうか? それを実際にやってみて古代人の生活に思いを馳せ、なばり学の授業に一層の理解を深めるのがこの講座の目的。同時に保護者も対象とし、なばり学に大人の関心も高めてもらうのが目的でもあった。
親子で土器づくり
9月23日、古代米を炊くための土器づくりを親子で行った。参加は10組の親子と幼児1人で23人。講師は三重県埋蔵文化財センターの中川明さん、西村昌晃さん、高松雅文さん。協力を名張市教育センター学校ボランティア室の上谷典秀さんと谷戸実さん。
中川さんが「今日は弥生式土器を作ります」と言って、スクリーンで土器の説明をした。土器には。縄文式土器の時代があり、それから弥生式土器の時代になった。縄文式土器は、黒褐色で厚い目。表面に縄目模様が多く、主に煮炊き用に使われた。弥生式土器は、縄文式土器に比べて薄手で硬く、赤褐色を帯びていて、模様がないか、あっても簡単な文様であった。弥生式土器は大きく分けて3種類があり、その1は甕で、煮炊きのための土器。その2は壺で、貯蔵のために使われた。その3は高坏で、飾るために使われた。 「今日は煮炊きに使う甕をつくります。直径15㌢、高さ15㌢位の少し小さめです」と言って制作に入った。親子の前には作業台となる板や、ヘラ、水の入ったタッパ、そして土器になる粘土が置かれている。最初に土器の基部をつくる。粘土で丸い団子を作って板に押し付けると厚さ1・5㌢位の円盤になる、それが底になる。直径1㌢位の粘土ひもを底にぐるりと回す、その上に粘土ひもをぐるりと積んでいく。指で慣らして、隙間や段差を無くして外側に広げるように3段積むと朝顔形に広がった基部の完成。その上に粘土ひもを3段、あまり広がらないように積む。その上に粘土ひもを2段内側に絞るように積む。ヘラで指の形が残らないように慣らす。基本形が完成する。上部をヘラで削り平らにする。太い目の粘土ひもを作り少し平らにし、外に開くように回すと、口縁部となり、慣らすと形の完成となる。あとは爪楊枝や貝殻で好きな模様を描いた。
指の跡や、粘土ひもの段々を消そうとして、指やヘラで慣らそうとするが、支え方次第でぐにゅっと歪む。それを修正しようとすると、他の所が歪むなど、結構難しい。しかし頑張って、全員の弥生式土器が出来上がり、本日の作業は終了。10月28日の野焼きまで郷土資料館に預けた。
乾燥させた土器を野焼きして焼成
土器を野焼きする10月28日、朝から郷土資料館プール横校庭では、担当の人々が薪を積んで火を焚き、その周りに遠巻きに土器を並べて乾燥させた。午後になって薪を直径約1・5㍍に2段積みし、それに受講生たちが作った土器を並べた。並べ方に工夫がいるようだ。土器を覆うように長さ1㍍程の薪を円錐状に組んだ。この日は自由参加なので数組の親子がやって来て、薪の隙間から自分の土器を確かめていた。1時40分頃着火。15分程すると盛んに炎を上げて焼成している。やがて円錐状のまきは燃え尽きて崩れ土器を覆う薪が燃え尽きるが下部の薪はまだ燃えているが、全ての作品が見えるようになった。幸い割れているものは1つもないようだ。熱が冷めるのを待って、11月3日まで、郷土資料館で保管。
かまどで古代米を炊いて食べる
今月3日の講座が始まる前から、10組の親子のためコンクリートブロックとレンガで、かまどが作られていた。講師の中川さんが「土器が1つも割れずに済んだのは、中に気泡が入ったりしないように、皆さんがちゃんと作った証拠です。弥生式土器は水漏れを起こしますが、使いこんでいくうちに良くなっていきます」と言って、着火用のおがくずのような着火剤や、紙、小さな薪、チャッカマン、耐火グローブ、トング、団扇などを配った。また古代米として、玄米の赤米も1合ずつ配られた。指の関節1つ分お米の表面に被るように水を入れるのは、通常と同じ。
土器の周りを囲む用に着火剤、紙、小さな薪を入れ火をつける。しばらくして土器の縦横後ろにも中くらいの薪を入れ、小刻みにパタパタ扇ぐ。どんどん扇ぐ。火が大きくなり熱い、煙い。これからが親子の意味が出て来る。耐えられなくなった子どもたちはいなくなり。親が頑張る場面となる。3人姉妹の児童(小2、4、6)は、頑張っていたが、遂に逃げ出した。時々戻って来てパタパタするが、直ぐに母親に団扇を渡していなくなる。母親の山中瑠美さん(38)は扇ぎながら「3人分だから効率が良い」と言って笑っている。それでも子供たちは、水を追加するときなど戻って来る。沸騰し、火勢をキープして、始めてから1時間ぐらいで出来上がった。さあ食べてみよう。長女の明彩妃さん(名張小6)、次女の悠季花さん(同4)は、「プチプチして美味しい。煙くて熱くて大変だった。昔の人はご飯を作るたびに大変だったと思う」と話した。3女の美宝利さん(同2)は「ちょっと美味しくない」と言っていたが食べ慣れると、どんどんぱくついている。お母さんは「美味しいです。いいおやつです。土器を作ってお米を炊く古代人の体験は、子どもたちの宝になると思う。来てよかった」と話した。明彩妃さんは「一番苦労したのは土器づくり」と言っていたが他の児童からも同じ答えが返ってきた。形を整える時ぐにゅぐにゅして決まらなかったのが大変だったようだ。
中川さんが「プチプチしているのが昔のお米です。今のお米と比べて甘みが足りません。赤米と白米を混ぜて作ったのが本来の赤飯です」と追加の説明をし、児童たちは皆、初体験を楽しんでいた。