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藤堂高吉公物語で集大成 はなびし庵で新作歴史影絵

名張市中町の伊賀まちかど博物館・はなびし庵(すみだ酒店)の角田勝さん(80)、久子さん(76)夫妻は、名張の歴史や昔ばなし、童謡などを、影絵劇で伝え続けている。この度、新作「~神様になったお殿様~『名張藤堂家初代高吉公物語』」を制作し3月15日、発表会が行われた。
夫妻は、170年の歴史ある自宅兼店舗(すみだ酒店)を、伊賀まちかど博物館として開放し、2004年から影絵劇の制作を始め「劇団ふたり」と名付けて、観光客や地元の人、幼稚園・学校、老人施設利用者などに、座敷を劇場として上演している。演目は、初瀬街道、江戸川乱歩、松明奉納、宇流冨志禰神社、名張忍法帖、能楽、季節の名張川、童謡等々多岐にわたるが、何れも名張の歴史や風物に係る物ばかり。功績を認められ、2018年には名張ユネスコ協会から「劇団ふたり」が、「なばりのたからもの」として認定された。残る重要な演目は、名張の初代殿様。尊敬すべきその人となりを、名張の人に良く知ってもらいたい。その思いを歴史影絵の集大成にして区切りをつけようと考えた。
名張藤堂家初代の高吉は、丹羽長秀の三男として誕生し、4歳で羽柴秀長の養子、10歳で藤堂高虎の養子となり、武功を重ね今治城の城主として27年間過ごしたが、高虎に実子が生まれ(高次)、高吉は天正伊賀の乱で焦土と化した名張に移封された。名張のまちづくりを進め、家臣や領民たちからも慕われて、91歳の生涯を閉じた。人々は遺徳を偲び、寿栄神社(丸之内)を創建して祀った。
脚本は郷土史家の中相作さん(70)。幼いころから周囲の思惑に翻弄され、自分の意志や希望を無視されながらも運命に逆らわず、自分が置かれた場所で自分にできることを着実に成し遂げる人物。勝さんは「影絵の限界を超えたストーリーで、難しいと思う」と言いながら人物描写は見事。黒ケント紙で影絵を切り抜いた久子さんは「ストーリーと影絵というビジュアルを合わせるのが物凄く難しかった。子犬を連れた子どもは高吉の幼少時代。白い馬に跨るのは高吉など、それなりに工夫をした。作った影絵は25枚程。それを組み合わせで、シーンを作って行く」と苦労を語った。朗読は、桜ヶ丘中学校・高等学校5年(高校2年)で放送部の清水優生さん(17)、吉岡夏野さん(17)。丁寧に心を込めて語った。音楽や効果音は放送部員がみんなで工夫した。
新作発表は勝さんの拍子木の音で始まった。駆け付けた北川裕之名張市長始め、高校生2人と学校関係者、中さんと近隣の人々ら約30人は直ぐに影絵の中に入り込んだ。高校生2人が声を合わせて「神様になった高吉公は、あの小高い丘の上からこのまちを見守り、きのうも、きょうも、あしたも、あなたや私とともに、ほらすぐそこに、いつまでも、いつまでも、いつまでも」で終わると、大きな拍手が起こった。
朗読した清水さんは「愛媛の松山出身だが、高吉が伊予を治めていたことは知らなかった。今、名張にいて、歴史の面白さと縁を感じている」と言い、伊賀市の吉岡さんは「風景を感じて頂けるように心がけた」と話し、2人は揃って「最後の声を合わせるのが難しく、20回ぐらい取り直した」と話していた。
角田夫妻は「名張のまちを影絵で語ってきた。最後はお殿様で終わる。歴史影絵は大作業になるので、もう無理じゃないかな。名張藤堂家邸を見学し、この影絵を見て、徳蓮院の高吉公のお墓にお参りするコースが出来れば非常に嬉しい」と話した。
影絵の上演は予約が必要。5人以上の参加者で1人500円。お茶と地元の菓子が付く。希望により地酒の試飲もできる。お問い合わせ先は、はなびし庵(0595・63・0032)まで。