「創造展」で最優秀新人賞 名張の飯田淳子さん
全国的な公募展「第77回創造展」で、全部門を通しての最優秀新人賞に、名張市の飯田淳子さん(70・桔梗が丘)が受賞し9月25日、名張市役所に北川裕之市長を訪問し報告した。受賞した作品は「伊賀上野天神祭行列図屏風」。この日は受賞作品を持参できなかったが、別の意図で18年名張市美術展市長賞の「里山椒魚図」を持参した。
飯田さんは1954年生まれ、77年大阪芸術大学グラフィックデザイン学科卒業。「3歳ぐらいから絵を描いていた。ずっとずーっと描いてきた」という。油彩画や水彩画を描いていたが、2008年から日本画を初め、以後日本画家として歩む。12年には、日本画の膠(にかわ)の使い方を知りたいと、京都造形芸術大学(通信課程)に入学。その間、17年には水墨山水画特殊技法の「塩分解法」の研究を始めた。水と墨と塩を配合し、塩が解けるときの濃淡の模様の変化が面白いが、単なる偶然性でなくコントロールできるように技術を習得した。一方、大学でさらに学ぶため同大学大学院に進んで、21年卒業制作に描いたのが、今回の創造展最優秀新人賞を受賞した「伊賀上野天神祭行列図屏風」である。
飯田さんは、13年から21年まで名張市美術展、みえ県展、伊賀市美術展で、数々の受賞をしているが、18年の名張市美術展で市長賞を受賞した「里山椒魚図」をこの日持参した。「塩分解法」で描いた全面に、岩絵具で着色された山椒魚が数匹潜んでいる神秘的な作品。
赤目滝水族館に
来年(25年)10月、日本オオサンショウウオの会・名張大会が開催される。それを聞いた飯田さんは「里山椒魚図」を水族館に寄贈することにした。この日は、赤目滝水族館の朝田光祐館長(21)も同席し、この贈呈も併せて市長に報告した。朝田館長は「水族館の正面の岩窟滝を模したサンショウウオ水槽の横に、工夫して大切に展示させていただく」と話していた。
「伊賀上野天神祭行列図屏風」
創造展「最優秀新人賞」受賞の当作品は、高さ約1・6㍍、幅約2・3㍍(P150サイズ)で大きく重いので、市長への報告会には持参できなかった為、名張市滝之原のアトリエ「阿吽庵」に伺って見せて頂いた。爽やかな赤が眼前に広がり思わず「おぉ!」と声が出た。色彩豊かで鮮やかで、中世の装束のような多くの人々や山車が縦横に描かれ、祭りの賑わいと雅びが、圧倒的に目に飛び込んでくる。「塩分解法」で屏風全面をまず描き、それに人物や風景、山車には細かい欄間絵まで描かれ、伊賀上野の祭りの慶びが溢れている。「この絵を描くには、菅原神社や上野図書館の資料をずいぶん調べた」と話し「この年コロナが大流行していた。祭りの絵には疫病退散の意味があり、願いを籠めて描いた」と動機も語ってくれた。
「賞やお金ではなく、自分を表現するために描いてきた。人に習おうと思わないで自分で考えてやってきたが、間違いではなかった。人を感動させる絵を描きたい、70歳の新人だがいつまでも新人で。『僕の前に道はない 僕の後ろに道はできる』」と高村光太郎を引用して笑った。来年3月には「伊賀上野天神祭行列図屏風」を初め飯田さんの日本画作品が、名張藤堂邸企画事業として一同に展示の予定。
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