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「とがったアートのイベントも」Gallery元町・始動

名張市の旧町・元町で、古民家を改造した「京風イタリアンらんぽ」を経営していた藤木泰之さん(52)は、止むを得ず閉店したレストランを、アートギャラリーに活用し「Gallery元町」として再起させることにした。
京都の大学に通っていた藤木さんは19歳の時、祇園のイタリアンレストランでアルバイトをしていたが、それが楽しくなり大学を中退して9年間修行。名古屋や東京で働きながら開業資金を貯め、2016年頃名張に戻ってきた。母親の介護をしながら、1年間程かけて古民家を探し、現在の物件にたどり着いた。自分のセンスで古民家らしく改造し、趣のある「京風イタリアンらんぽ」を2019年6月開業。お店は賑わい、予約が数か月先まで埋まるほどであった。多忙な日々を過ごしていると、ある時から体がしんどくて動かせない程になった。疲労が重なったと思って病院に行くと、腎臓がんと診断。20年8月に腎臓1つと2分の1の摘出手術を受けた。開業から1年と少しで、残念だが休業することに。その後も、塩分の摂取量を1日2グラム以下にしなければならず「味見もせずに料理を提供することは出来ない」と結果的には店を閉店せざるを得なかった。閉店後もジャズトリオを招き、お酒を飲みながら演奏を聴くジャズクラブの試みや、落語会を開くなど、町と店が繋がり町がにぎやかになる試みは続けてきた。
藤木さんは美術館巡りが好きで、見たい作品があると、九州でもどこでも飛んでいくほど。中でもシャガールが好きだという。「名張にはアートを展示するところがない」と思っていたところ、ある人から「この店はギャラリーにすれば良い雰囲気になる」と言われ「名張には、とがったアートのイベントがないので、この店がリボーンすれば使ってもらえる良い機会」と決意を新たに名前も「乱歩」を卒業して、地域に根付くように「Gallery元町」と名付けた。ギャラリーは、白いしっくい壁と黒い柱、吹き抜けのように天井が高く、そこを太い梁が横断する古民家独特の趣のある建築。レストラン時代の色々な装飾は取り外しできるだけ無機質に仕上げたが、レストラン時代に縦横に設置していた配線ダクトは、自由な照明が可能となるので、ギャラリーには大いに役立った。
第1回の展示会は兵庫県在住の造形作家・升田学さんの針金アート「ヒトスジ」。大きくて複雑な仏像のようなオブジェも、繊細なアクセサリーも、全てひと筋書きのように1本の針金で仕上げる。今年3月に奈良市のならまちであった、升田さんの展示を見に行ったときに「個展ならこけら落としに行きますよ」と快く言ってくれた。期間は30日と10月1日。時間は午前10時~午後5時で入場無料。この展示会は、第66回名張市美術展覧会関連事業の「旧町まち歩きiroiro文化芸術体験」催しの一環ともなっている。
藤木さんは「名張の旧町の街並みが新旧混在しているが、これもアートではないか。名張というところに住んでいる人達が芸術に親しんでもらえる空間を創って、アートに親しんでもらえれば幸せなこと」と語り「絵画、アート、音楽ライブやイベントに、色々な人に使ってもらえれば。一般の方も応援したい」とこれからの展開について話していた。また藤木さんは、自分でもアートに関わっており30日には、名張藤堂家邸で遠藤冬樹バンドの演奏と互いに即興でコラボして、自分が創ったプロジェクションマッピングの投影を行う。時間は午後7時~8時。入場無料。