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中野英一さんの遺作展

青山讃頌舎「魂の相剋」
伊賀市出身の画家で、二紀会で活躍した抽象画家・中野英一さんの遺作展「魂の相剋」が8日、伊賀市ミュージアム青山讃頌舎(うたのいえ・伊賀市別府)で始まった。初期の1957年から晩年の2000年までの作品37点が展示され、作家の内面の変遷が深く理解できる。伊賀市文化都市協会(ぶんと)の主催で10月9日まで。
中野さんは1926年、現在の伊賀市予野に生まれ終戦を19歳で迎えた。二紀会同人の萩森久朗氏に師事し、三重県展で知事賞、二紀展で同人賞、同人優賞などを受賞し、77年二紀会会員に推挙され、80年には三重二紀会の結成に尽力し、初代支部長に就任。各地の美術展の審査員を務めるなど後進の育成にも活躍し、2005年78歳で亡くなった。
今回の作品は、自宅にある約800点の作品から、長男の中井英毅さん(67)が選び出した。ほぼ時代順に展示されていて、50年代から60年代初期の作品は、建物や街並みを崩して抽象画にしたもので、元の具象の面影が残るのが面白い。60年代に入ると絵の具を厚く盛り上げて、激しい感情を感じさせる作品もあり、英毅さんによると「戦争を思春期に体験したからか、規制されることに反発する気持ちがあり、激情が絵に現れたのかも」と話した。小さく切ったキャンパス地に絵の具を塗り、それを何枚も貼り合わせた作品や、キャンパスにナイフでいくつも切れ込みを入れた作品もある。80年代に入ると独特の青を基調に、内面的で深い心情の作品となり、鑑賞者の気持ちを落ち着かせてくれる。2000年の作品など晩年の作品からは、色が無くなり白が基調のレリーフのようになっているのも興味深い。
観覧料は、一般300円、高校生以下無料。開館は午前10時~午後4時半で火曜日が休館。
また、津市中央の三重画廊では10月4~8日「中野英一遺作小品展―抽象作品を主体としてー」が開かれる。

堤側庵ギャラリー「~スケッチブックより~」
堤側庵ギャラリー(名張市新田)で9月9日~14日、中野英一遺作展「~スケッチブックより~」が開催された。前日の8日から伊賀市ミュージアム青山讃頌舎(うたのいえ)で、中野英一遺作展「魂の相剋」が開かれており、タイミングの良い同時開催。約40点の作品には風景画として仕上げられたものもあれば、軽いスケッチもあった。抽象画家の原点に、具象がある。「雪の朝」や「海辺の聚落」の風景の一部を切り取り、絵の具の盛り上がりを見ると、昨日見た中野英一さんの、抽象画の一部を感じる。すごく落ち着いた気持ちの良いスケッチを見ていると、その時の作家の心理が手に取るように分かる気がした。
ギャラリー館長で組紐作家の中内中さんは「折角こんな絵を描いていたのに、今まで人前に出なかったのが惜しい。具象と抽象をセットにして画家を理解できる、大事なことだ。どんな景色や、空気感が気に入って、具象の中に抽象のセンスを養っているのか、景色から抽象の発想を得ているのかを考えると、この作家はこういう世界を持っていたと発見する面がある。今回の、異なる空間で同時開催の企画は意義深い」と話していた。
会場に、年配の女性が来られた。中井登志子さんと言い、中野英一さんの奥方の妹さんという。会場を一通り巡って「こんなにたくさん風景画を描いていたなんて知らなかった」と作家の別の面を改めて知ったようで、驚いていた。