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名張市夏見・福典寺で初の「天武忌」

真言律宗瑠璃山寿命院福典寺(坂東瑞祐住職・56)で9日、天武忌(天武天皇追善法要)が初めて営まれた。同寺は国史跡「夏見廃寺」の近くにあり、天武天皇の娘で初代斎王として伊勢神宮に仕えた大来皇女(おおくのひめみこ)が、父を供養するために建立を発願した昌福寺が、夏見廃寺であると言われており、昌福寺が建立されたのは725年で、2025年は設立1300年の記念すべき年に当たる。
福典寺では大来皇女の意思を引き継ぎ、同じ夏見にある寺院として、その年を節目に行事を予定している。また、この年には、夏見廃寺出土の塼仏(せんぶつ=平面に仏像を浮き彫りにして焼いたタイル状のもの)と同様のものを作成し、福典寺本堂正面の欄間に張りつめる計画がある。塼仏は夏見廃寺展示館で「金堂塼仏壁」として見ることができる。
この日は、檀家の人々が男女20人づつ、天平時代のあでやかで雅な衣装を着て、黄金衣装の4人の僧侶と共に法要の列を作った。広い境内を練り歩いた後、本堂に入り法要が始まった。本堂の中央付近に目立つ1人の女性が大来皇女だ。僧侶の読経の声が響く中、女性2人の笛による雅楽が奏上され、秘仏の薬師如来十一面観音の御開帳。それに続いて4人の僧侶の中央に大来皇女が立ち、十一面観音に向かって「本願表明」を読み上げた。読経が続く中、夏見廃寺設立1300年記念に向けて塼仏造立の説明がされた。最後に全員が順に焼香し、約40人の一般参列者も続いた。この後、午前10時に始まった法要は滞りなく終了した。
大来皇女の大役を果たしたのは、生悦住泉花(いけずみせんり)さん(14・赤目中3)。「本願表明」はどんなことが書いてあったのか聞くと「一生懸命読んだけど、よくわからなかった……」ごく若い女性にとって、大変なセレモニーだから無理もない。マイクがないので「本願表明」も「塼仏造立の説明」も聴きとれなかったが、坂東住職に聞くと「天武天皇の供養のために、当時の夏見の人々が後援してくれ725年に寺を建てたが焼失。しかしその後も、人々の願いは消えずに引き継がれ、本日ここに法要をする事ができるに至った」のが要旨。「大来皇女の昔から、天武天皇を供養してきた、この土地の人々の願いと思いを引き継ぐ」住職の願いが表明されたものであった。また、塼仏造立については「夏見廃寺と同じものを1300年記念に向けて、ただいま製作中」という内容であった。
東住職は「参列した方々に大変喜んで頂いた、それが一番の供養につながる。また、名張に天武天皇を供養するお寺があることも周知できた。今日のような晴れやかな天武忌は1300年記念迄の予定であるが、天武忌は毎年続けて行く」と決意を語った。
法要の後、参列の人々は天平の衣装のまま夏見廃寺に向かい、約1300年の昔を偲んで散策を楽しんだ。