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松明調進行事列車ツアー 臨時列車で奈良に直行

東大寺(奈良)二月堂のお水取り(修二会)に使われる松明は3月12日、道観長者に報告と安全祈願を行う調進法要を経て、第776回松明調進として東大寺二月堂に運ばれた。今年は近畿日本鉄道(近鉄)が赤目口駅から奈良駅まで直通する臨時列車を用意し「松明調進行事列車ツアー」として運行した。
松明調進行事は県の無形文化財でもあり観光としての新しい展開に、一見勝之三重県知事も見送りに来て「松尾芭蕉が二月堂に籠って詠んだ『水取りや氷の僧の沓の音』は、三重県の人間が奈良との繋がりを示すものでもある。この松明は二月堂に運ばれてそこで大きな炎を燃やすことになる。東大寺であるから国の厄を祓う。今年は正月から大きな地震があった。そういうことが起こらないように全国の人がお祈りをする。我々が持っていく松明によって聖なる光が灯されて、日本国全体のカルマ(業)が燃やされる。それらを祈念して、みんなで一生懸命送り出したい」と挨拶した。北川裕之名張市長は「近鉄さんとのお話が速やかに進んで有難い。今日参加する人は例え5㍍でも10㍍でも運んで、気持ちを豊かにして欲しい」と参加者に呼びかけた。近鉄電車の原恭社長は「昭和5年に近鉄電車が開通し、昭和8年には松明調進が近鉄を使って行われている。来年は第777回、早速車両の手配をする。この地が大きな役割を担っていることを広く知ってもらう一助になれば」と挨拶した。伊賀一ノ井松明講の森本芳文講長は、今回の経緯を話し関係者に謝辞を述べた後「松明は重い。が、歴史はもっと重い。絶えることなく続けて行く」と決意を語った。
赤目口駅ホームに臨時列車が到着し「お水取り松明調進」のヘッドマークに「貸切」の表示のある4両連結。5荷10束の松明が運び込まれ、講の人々やツアー客が次々と乗り込んだ。
ツアーは名張の名を広める
近鉄電車広報部によると、ツアーには45組65人が参加。三重県、奈良県、大阪府が多かったが、愛知、福井、埼玉、福岡からも参加があったとのこと。松阪市から参加した中井町子さんと服部佳代子さんは「近鉄のチラシでこのツアーを知った。二月堂のお水取りは一度行きたいと思っていたが機会がなかった。驚いたのは、お水取りの松明が800年近くも、ずーっと名張から送られていた事。全然知らなかったし、お水取りが名張という意外(?)なところから始まっているというか、支えられているということに驚いた」と感服の様子で話していた。
車内では極楽寺の中川拓真住職が、ツアー客向けに「お水取りと松明講」について話をした。何故お水取りというか、道観長者と僧聖玄、松明と松明講等を分かりやすく、詳しい解説にツアー客は喜んでいた。
今回は、西大寺駅で乗り換えずに直行するため、電車は高の原駅まで進み、進行方向とは逆の方向で西大寺駅に戻り近鉄奈良駅に向かう。車両の外を見ると鉄道マニアが何人も、こちらにカメラを向けていた。一方、松明講の人々が「これからは絶対に電車で奈良に」「いや、そう決めつけなくても」や、講の後継者問題について「『一ノ井』とついているから難しい。自分は『柏原』だから、いつまでも外様」と地域性について話す人もいるなど、有意義な場でもあったようだ。
女性も松明を担ぐ
奈良が近づくと「荷」を担ぐ希望者を募り、また雨の中を担ぐ注意点について、放送があった。駅についてからは東大寺仁王門を通り、大仏殿前で曲がり二月堂に至るコースを、交代しながら進んだ。30㌔ぐらいあるが女性も頑張っていた。
八尾市から来た秋田由美さん(50代)は「重たかった!でも気持ちよかった。私が担いだ松明で来年お水取りですよね、来年が楽しみ。絶対来ます!」と元気いっぱい。八木(柏原)から来た弓場あす華さん(63)は「重たかったが、山の新鮮な香りや風を感じた。住職が山から切り出す松明の話をしてくれたので、山の神さまを感じたのかも」と言い「雨に舁(か)く 声を一つに お松明」と、舁(かつ)いだ思いを早速一句にして詠った。普段から俳句に親しんでいるという。
降りしきる雨の中、最後の急な階段を頑張って、5荷10束の松明は無事二月堂に安置された。その後松明講の人々は、この日の夜~明朝4時に昨年収めた松明が使われる、お水取りのクライマックス「達陀(だったん)の行法」に立ち会った。