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近大高専研究発表 「泊まれる博物館~江戸川乱歩記念館~」

名張市と近畿大学工業高等専門学校の学生は、名張市の旧町における町家を調査・研究することや、三重県指定文化財の名張藤堂家邸の活用促進を目的に共同研究をしている。本年度の研究発表の第1弾として、近大高専都市環境コース(建築系)の5年生が設計製図Ⅱの課題で取り組んだ「泊まれる博物館~江戸川乱歩記念館~」の設計提案(図面と模型)と、学生による発表(7作品を予定)を3月15日と17日に行う。
設計課題の趣旨は名張生まれの推理小説家・江戸川乱歩の作家デビュー100周年に因んだもので、名張市内の市立図書館には乱歩コーナーはあるが記念館が無い、旧市街地には観光客が気楽に宿泊出来るところが無いことから、名張の旧町に新しい拠点を提案することで町づくりの一助になることを目指している。
その事前レクチャーが1月30日にあり、7作品の内3作品が学生たちによって披露された。設計にあたっての条件は、建築場所=名張市新町の旧酒蔵所跡。敷地面積=2200平方㍍。必要諸室=展示室(100平方㍍×2室)、収蔵庫(80平方㍍)、カフェ(50平方㍍程度・厨房20平方㍍)、宿泊施設(3~8人用、個数自由)、受付・事務所、エントランス、トイレ(男・女・多目的)、駐車場(10台)、駐輪場、広場、その他。提出物は、コンセプト図、配置図、平面図、立面図、断面図、模型(1/100)。
この日プレゼンテーションした坂本鈴奈さんは「めぐる」というタイトルで、大きな円形の建物を考えた。円は途切れることがない。行き止まりがなくなり、人々が巡り行きかう。1階から3階まで「ミステリーな螺旋でめぐる」がコンセプト。地面も斜めに傾斜した造成をしてあり、構造から生ずる螺旋の動線が乱歩のミステリアスな雰囲気と合致する提案。
吉田光汰さんの作品タイトルは「Stolen Books~その謎はマントによって隠された~」盗まれた本たちとは、乱歩の作品群を意味し、サブタイトルによって、それらは「マント=怪人二十面相」によって隠されてしまったことを意味している。建物そのものがシンボリックな外観で、マントのような柔らかい曲線と怪人が捻じ曲げた不思議な大空間とした。室内は乱歩作品に因んだ名称を与え、「蟻地獄」を模したオブジェや、「屋根裏の散歩者」をモチーフに客室を造り造形作品と結びつける。名張川の風景を取り入れた配置とし、客室はメゾネット、夏には花火大会が目の前に広がる。
大嶋和也さんは「幽光」がタイトル。怪人二十面相のマントをイメージした屋根を設け、旧町にインパクトを与える建築とした。天井を屋根に沿って高低差をつけることで洞窟のような空間にし、ミステリー感が出るようにした。エントランスを経て展示室を抜けるとテラスや屋上に繋がる階段があり、景色を楽しみながらくつろげる。採光を取り入れる大きな窓の客室は名張川を一望できる。部屋や、屋上テラスから花火大会を見ることもできる。
奇しくも2人がマントをコンセプトに取り入れている。吉田さんは、マントが軽やかでタープのように翻っている。大嶋さんは、マントが建物を柔らかく包み込んでいるように感じる。2人の個性が良く分かる表現になっていた。
3人に旧町について感じるところを聞いてみると、坂本さんは「名張育ちの自分でも旧町を歩くと、こんな建物があったんだと気づかされる。柳原町界隈、喜多藤(きたとう)……」、吉田さんは「古風な街の印象。歴史的建物、ひやわい、水路沿いの街並みがきれい」、大嶋さんは「イオンの奥、鳥居の南、タイムスリップして昔に戻った感じがする」と夫々の印象を話してくれた。
都市環境コースの研究発表は、15日午前10時~11時、及び17日午前10時~12時。場所は旧細川邸やなせ宿(新町)。
また同所の中蔵にて、15日~20日に作品展示が行われる。発表会には北川裕之名張市長が出席の予定。