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3年ぶりに名張の第九

「全ての人が兄弟になる」日を願って
名張第九を歌う会が主催の「第30回記念市民コンサート第九」は12月18日に開催される。本番まであと1か月余りとなった11月5日、名張市総合福祉センター「ふれあい」で練習の様子を取材した。合唱団の構成メンバーは小学生から80代まで約50人。合唱の素人からベテランまで多様な集まりで、今年の新人は4人とのこと。この日の出席者は、合唱指導の羽根功二さん(78)、アルト12人、男声(テノール・バス)16人、ソプラノ14人合計42人で、羽根さんが指摘するポイントをおさらいしながら、全曲の最初から最後まで進めていった。一人一人が心から第九を楽しんでいる様子で、仕上がりは順調のようだ。
合唱の練習はハーモニーや曲想の表現を統一するため、ともすれば圧力のかかったものとなりがちだが、羽根さんの指導は強制の伴わない、一人一人が持つ「第九を楽しく歌う心」を大切にして、そこから自発を促し、包み込むような姿勢で進歩に寄り添うものに感じた。羽根さんは「戦後の大変な時代、プロの音楽家に仕事が無かった時、合唱付きの第九の演奏会をして年越しの給料を支払うことができた。それ以来、年末の第九は日本人にとっては近しいものになっている。年末にこんなに第九を演奏するのは日本だけ。近しいだけに、常に新鮮な気持ちを忘れないように心がけている。毎年同じ繰り返しでなく進歩があるものに」と第九を指導する心構えを語ってくれた。
合唱団員の中には、夫婦で参加している方もいる。伊賀市北山在住の森永典生さん(65)道子さん(62)夫妻は「2011年の東北大震災の時、5月のチャリティで合唱に参加したのが始まりで、6月には家族3人(娘と夫婦)でこの合唱団に入った。初めて第九を歌って味わった達成感が忘れられない。毎年歌っていると、歌詞の意味を考えるようになるし、ハーモニーを楽しめるようになってくる。時には音楽を冷静に見つめながら歌うこともある。声を聴けばお互いの体調管理もできる」と毎年第九を歌っている進歩と充実感を話してくれた。娘さんはその後結婚して今は子育てが大変な時期で、そのうち子どもの手が離れれば、親子でまた第九を楽しみたいという。
創設32年になる合唱団だが、コロナで演奏会が出来なかった時期があるので、今年は第30回目のコンサートになる。その間全てのステージに参加してきた合唱団代表の松岡寿夫さん(75・つつじが丘)に話を聞いた。「この曲はドイツの詩人シラーによるものだが、Alle Menschen werden Bruder(全ての人が兄弟になる) 世界をベートーヴェンが求めてこの詩を取り上げた。今、世界が不穏で、武力的緊張があちこちにあるが、いつの日か世界がそのようになるはずだと信じて、人類の喜びの歌をお届けしたい」と、この曲を今日歌う意味について話してくれた。「今の箇所素晴らしい、今日ここまで仕上がっているとは思ってなかった」羽根さんの言葉に合唱団員の嬉しそうな笑い声が聞こえる。今年の第九は団員50人が中心となって心のこもった演奏会になることだろう。
コンサートは、指揮が朝倉洋。管弦楽に大阪市民管弦楽団。ソリストが堀川明日香(sop)、味岡真紀子(alt)、加藤利幸(ten)、羽根功二(bar)。合唱団が名張第九を歌う会約50人及び賛助出演で合計約70人。演奏曲目は何れもベートーヴェン作曲で第1部=「エグモント序曲」・「ヴァイオリンと管弦楽のためのロマンス第2番」独奏ヴァイオリン船越さくら・講演「第九よもやま話」朝倉洋▽第2部=交響曲第九番ニ短調作品125「合唱付」となっている。〈敬称略〉
開演は午後2時(午後1時30分開場)で、場所はadsホール。入場料は前売り1200円(当日1500円)、高校生以下は無料。お問い合わせ先は「名張第九を歌う会」事務局の山田泰次さん(090・7045・3383)まで。なおホームページがあり「名張第九」で検索できる。