第23回三重県文化賞 谷本雅一さん受賞
名張市桔梗が丘の石材会社5代目社長・谷本雅一さん(48)が第23回三重県文化賞「文化功労賞(美術分野、石彫)」を受賞した。この賞は優れた活動や功績の周知を図るとともに、より高い自己研鑽により、目標になる顕彰制度でもある。
技術の錬磨
谷本さんは1976年4月生まれ。高校卒業後、愛知県岡崎市の石材会社で4年間修行後、名張に帰り家業に従事。高校の時は美術部に所属し、美術系大学に進学したい思いはあったが、父親が許してくれなかった「美術で食えるか」と。
石材会社では厳しい指導を受けたが、めきめき腕を上げ平成9年21歳の時、第35回技能五輪全国大会で優勝し、労働大臣賞を受賞。平成13年25歳時に、全国青年大会美術展の部で最優秀賞。平成19年31歳の時には、全国石材技能選手権で一位となり厚生労働大臣賞を受賞した。
平成21年父親の急逝により5代目社長となるが、技術の切磋琢磨は変わることがなかった。平成22年34歳で、優秀技能者として三重県知事賞を受賞。その後も、石材グランプリで「近江様式宝筺印塔」「柚ノ木灯篭」「當麻型五輪塔」で受賞を重ね、それまでの功績が評価されて平成26年、石工業界では最年少の38歳の若さで、卓越技能者表彰「現代の名工」として厚生労働大臣賞を受賞。チャレンジの志は変わらず、平成27年39歳の時、技能グランプリで第1位となり厚生労働大臣を受賞した。そして令和元年43歳の若さで「黄綬褒章」を受賞した。
アートへの挑戦
石工として最高の技術者の谷本さんは、若い頃から石の芸術への思いがあった。三重県展に応募を重ね、平成25年「MUGEN」が入選。平成28年「浄化」が三重県町村会長賞。平成29年「孤独」が優秀賞。平成30年「My Life」が優秀賞。令和4年黒岩花器「宇宙」が優秀賞。令和6年創造美術協会の第77回創造展で「energy」が新人賞を受賞した。その他、東海伝統工芸展には平成31年から令和6年まで毎年茶碗や花器を応募し、入選や優秀賞の受賞を続けている。これらの伝統と芸術分野への功績が認められ、今回の「第23回三重県文化賞『文化功労賞』」の受賞となった。
谷本さんは「伝統工芸の石の世界には、美を表現する意識がなかった。磨く、マット、タタキ、加工の差で美が表現できる。美的発想を石工が持っていないのは勿体ない。その世界に目を向け付加価値を上げないと、職人の努力が正しく評価されない。石の世界はじり貧になる」と危機意識を語り「技能を継承し、美を追求できることで評価される見本があれば、若手がやる気を起こすのではないか。若い人たちの見本になり、自分たちがコツコツ努力を重ねることで、自分が70、80になった時、石の世界がどうなっているか見てみたい」と述べ、そのうえ「田舎で育ったので先祖への思いはある。伝統の中で生かしてもらってきた。生き方を見てもらえるように上へ上への努力を続けたい」と家業への思いを語った。
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